診療支援
治療

手掌に水疱,膿疱を生じる疾患
Vesicular and purstular eruptions of palms
村上 正基
(愛媛大学特任教授)

【手掌に水疱,膿疱を生じる疾患とは】手掌(手掌あるいは足底)に水疱や膿疱を生じる疾患は多岐にわたり,その臨床像は時として非常によく似通っているものの,実際には全く異なる原因によることもあるため,常に鑑別疾患を念頭におかなければならない.大まかな原因として,感染症,湿疹皮膚炎群,水疱症(先天性,後天性),薬剤誘発性などが挙げられる.水疱を形成する疾患,膿疱を形成する疾患をそれぞれ表1-31表1-32にまとめた.

【手掌に水疱をみたら】

1.感染症

1)手部水疱性膿皮症

 手湿疹や小外傷に続発して発生する伝染性膿痂疹の一型で,厚い角層下に大型の水疱を生じる.培養により黄色ブドウ球菌が分離される.

2)手足口病()

 4歳までの乳幼児に好発する.口腔内粘膜疹と同時あるいは1日遅れて,手や足に楕円形の1~5mm程度の紅暈を伴う灰白色水疱や紅斑性丘疹が多発する.潜伏期間は2~7日で,7~10日で軽快治癒する.主な病原体としてコクサッキーウイルスA16とエンテロウイルスが知られる.

3)ヘルペス性瘭疽

 口唇ヘルペスをもつ乳幼児の指しゃぶりによる自己接種が原因となることが多い.有痛性のことが多く1~3歳児の母指に発症するが,多指に生じることもある.通常治癒までに3~4週を要する.

4)疥癬()

 掌蹠,指間に小丘疹,小水疱,鱗屑を認める.特徴的所見は疥癬トンネル(線状鱗屑として認められる)と疥癬虫(ダーモスコープで観察するとトンネルの先端に褐色の三角形構造が認められる).

5)白癬(汗疱状)

 一般的に小水疱であるが,時に大型水疱の形成や膿疱化を認める.KOH直接鏡検にて診断が可能.id反応(後述)を生じることがある.

2.湿疹皮膚炎群

1)汗疱(異汗性湿疹)()

 手掌足底に表皮内小水疱(deep seated vesicles)を生じることがあり,癒合あるいは拡大するとタピオカ様を呈する.

2)接触皮

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?