【毛細血管拡張とは】真皮浅層における持続的で非可逆的な毛細血管(乳頭層),後毛細血管細静脈網(乳頭下層),細静脈網(網状層下層)の炎症によらない拡張状態である.それらの血管は,通常は赤血球が少なくて肉眼で見ることができないが,何らかの原因で,大量の血液流入が起きると赤血球が増えて赤い糸のように認識される.毛細血管と後毛細血管細静脈の拡張は赤くて細い糸状に,細静脈の拡張は青みを帯びた毛糸状に見える.先天性と後天性に分けられたり,臨床形態から,丘疹状,丘疹分枝状,分枝状,斑状に分けられることもある.原因はさまざまで,血中エストロゲンの増加や糖脂質分解酵素の欠損・活性低下のために糖脂質が血管内皮細胞に沈着したり,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)やTGF-βなどの血管増生因子の関与が示唆されるものなどがある.
【毛細血管拡張をみたら】次の病態・疾患に留意する(表1-48)図図.①クモ状血管腫(先天性):女児に多く,顔面,上半身にみられる単発ないし数個までのクモが足を広げたような形態の毛細血管拡張で,硝子圧で拍動を認める.②クモ状血管腫(後天性):妊娠や慢性肝障害などで認める.症状は上記と同じだが,多発傾向がある.血中エストロゲンの増加が関与しているといわれている.③紙幣状皮膚:肝障害患者の上肢伸側に不鮮明な分枝状毛細血管拡張を認める.④酒皶:中年の男性に多く,鼻背や頰部にざ瘡様の毛包炎に混じて毛細血管拡張を認める.⑤放射線皮膚障害後の毛細血管拡張:癌治療や長時間の放射線照射のあと,数年~十数年して,瘢痕萎縮した病変内に毛細血管が拡張してくる.⑥遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler病):優性遺伝,TGF-β受容体のendoglinやALK1,SMAD4遺伝子の変異.頻回の鼻出血をきっかけに口唇,舌,口腔粘膜や指端などに丘疹状ないし斑状の血管拡張を認めるとともに内臓に動静脈奇形を生じる
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