診療支援
治療

あざ(母斑)
Nevus
川内 康弘
(東京医科大学茨城医療センター教授)

【あざとは】「あざ」は日常生活でよく用いられる言葉で,生まれつき,あるいは幼小児期に生じる皮膚の色調変化または形態変化のことである.「赤あざ」「茶あざ」「黒あざ」などの言葉で用いられる.「あざ」は俗語であるが,医学用語として「あざ」と最も近いのは母斑であろう.母斑は皮膚科特有の疾患概念であり,胎生期の体細胞レベルでの遺伝子異常に基づく発生異常で,皮膚の限局性組織奇形と定義される.母斑は生涯不変ではなく,時間の経過で多少とも大きさ,性状に変化を生じる.例えば,色素性母斑は,幼小児期には黒色調が強く扁平で隆起がないが,成人期を経るにつれて色調が薄くなり,徐々に隆起してくるし,乳児血管腫は生後間もなく出現して急速に大きさを増すが,小学校入学頃までには自然消褪する.

 母斑はその発生起源によって表1-56のように,大きく上皮系母斑,メラニン色素(神経節起源細胞)系母斑,間葉細胞系母斑に分類される.そのなかには,血管系の単純性血管腫,乳児血管腫などのように本来母斑的性格が強いが,腫瘍と同じ名称でよばれるものがある.このように後天性遺伝子異常に基づく疾患概念である母斑と腫瘍の境界線は不明瞭な点もあるが,母斑のほうが腫瘍よりは正常に近い概念といえよう.

【あざをみたら】その色調,形態から表1-56の大項目である上皮(表皮・付属器)系母斑,メラニン色素(神経節起源細胞)系母斑,間葉細胞系母斑のどれに該当するかを考えながら診断を進める.

□鑑別のポイント(表1-56)‍ ①上皮系母斑:表皮母斑は疣状で列序性配列を示すことが多い.同様に疣状で列序性配列を示す脂腺母斑との鑑別が難しいことがあるが,脂腺母斑は黄褐色であることから鑑別可能である.どうしても鑑別できないときは病理組織学的に鑑別する.②メラニン色素系母斑:多くの場合,色調の違い,特徴的な発生部位などから臨床的鑑別が可能

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