診療支援
治療

黒色調の皮膚腫瘍
Pigmented skin tumors
爲政 大幾
(大阪国際がんセンター主任部長)

【腫瘍が肉眼的に黒色調を呈する原因】腫瘍が黒色調を呈する場合には,①腫瘍細胞自体がメラノサイト由来でメラニン産生能を有する場合と,②腫瘍内で腫瘍細胞と共棲するメラノサイトがメラニンを産生する場合,③メラニン以外の原因による場合がある.③では,ヘモグロビンやヘモジデリンなどの血液に由来する場合や,腫瘍表面に付着した痂皮や壊死組織が黒色調を呈する場合,被覆皮膚の2次的色素沈着によるものなど,メラニン産生によらない多彩な2次的要因も存在する.

【黒色調の皮膚腫瘍をみたら】高頻度に黒色調を呈する代表的な皮膚腫瘍を表1-57に示す.腫瘍の出現時期,増大速度,色調の変化,投薬歴などに関して詳細な問診をとる必要がある.色素沈着の性状を見分けるにはダーモスコピー検査が最も有用である.臨床診断能力の向上のためには,黒色調を呈した原因を腫瘍組織の病理所見で検討することが重要である.①メラノサイト系腫瘍:腫瘍細胞自体によるメラニン色素産生に起因する.産生されたメラニン色素の存在部位(深さ)によって腫瘍の色調が異なる.良性腫瘍・母斑:色素性母斑,青色母斑など.悪性腫瘍:悪性黒色腫.②非メラノサイト系腫瘍:腫瘍に共棲するメラノサイトによるメラニン色素産生に起因する.良性腫瘍・母斑:脂漏性角化症,皮膚付属器腫瘍(汗孔腫,毛母腫など),皮膚線維腫.悪性腫瘍:基底細胞癌,Bowen病,光線角化症,乳房外Paget病,隆起性皮膚線維肉腫(Bednar腫瘍).③メラノサイト系腫瘍,非メラノサイト系腫瘍以外の原因によるもの:炎症性色素沈着,薬剤性色素沈着(ミノサイクリン,フルオロウラシルなど).血液貯留・血管拡張・ヘモジデリン沈着:血腫,血管腫,浅在性静脈血栓,血管肉腫,Kaposi肉腫,血痂や壊死組織の付着.粘液貯留(アポクリン汗器官腫瘍).異物(腫瘤を呈することはまれ).


鑑別のポイント

 黒色調の有無や濃淡に

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