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治療

Treponema pallidum (Tp) の検出法
Detection of Treponema pallidum
安元 慎一郎
(安元ひふ科クリニック院長)

【概説】梅毒感染後比較的早期に出現する病変を主訴に受診した症例ではいわゆる梅毒血清反応が陰性であることが多いため,その確定診断には病変部位からの検体においてTreponema pallidum(Tp)の存在を証明する必要がある.暗視野法,墨汁法,パーカーインク法,ギムザ染色などの顕微鏡を用いた直接鏡検によるものやPCR法,生検標本の免疫組織化学染色法などが行われる.


検査の進め方

 梅毒の病原体Tpは現時点においても培養が不可能であるため,一般細菌の皮膚感染症のように分離培養検査を行って病原体を確定することはできない.また,梅毒ではその診断確定,治療効果の判定などに梅毒血清反応(脂質抗原法およびTp抗原法)を用いるが,一般に感染後約3週の期間を経ないと陽性所見が得られない.よって,いわゆる1期疹である初期硬結,硬性下疳などが存在する症例では,病変からの検体でTpを証明することが診断確定につながる.さらには湿潤病変である第2期の粘膜疹,扁平コンジローマなどからは病変からの滲出液や組織を採取して直接Tpを検出することが可能であるので,必要な場合には試みる価値がある.

 また,臨床的に梅毒以外の疾患の可能性も疑って皮膚生検を行った場合や組織内の形質細胞の浸潤所見などから病理組織学的に梅毒を疑う場合などには,組織内のTpの免疫組織化学染色などを行うことによってTpの存在を証明することが必要である.

1.直接鏡検によるTpの証明

 直接鏡検によってTpを検出する観察法としては,暗視野法,墨汁法,ギムザ染色などがある.いずれの場合も病変部からの滲出液を採取して検体とするが,硬性下疳では潰瘍部の表面を,その他の病変では病変の一部を滲出液が出るまで擦過する.この際,出血が多いと赤血球が鏡検時にTp確認の障害となるので,検体の採取にはある程度の熟練を要する.いずれの方法でもTpを確認するには油浸のうえ

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