診療支援
治療

一次刺激性接触皮膚炎
Primary irritant contact dermatitis
本田 哲也
(浜松医科大学教授)

病態

 一次刺激性接触皮膚炎は,物理的・化学的刺激など,接触したさまざまな刺激が一定以上の閾値を超えることで誘導された細胞障害の結果として生じる,抗原非特異的な皮膚炎症である.臨床的にいわゆる「原因不明の」湿疹と総称されている皮膚炎症の多くは,一次刺激性接触皮膚炎と考えられる.

【病因・発症機序】刺激物質により病態形成機序はさまざまと思われるが,一般に細胞が障害を受けると,damage-associated molecular patterns(DAMPs)と総称される,自己由来の起炎物質が放出される.多くの一次刺激性接触皮膚炎は,ケラチノサイトを主体とした細胞から放出された,種々のDAMPsを含むサイトカイン,ケモカインによって炎症が誘導されていると考えられている.界面活性剤の使用や低湿度などの生活環境により角層バリアが障害されると,より多くの刺激物質が皮膚に侵入し,炎症が惹起されやすくなると考えられる.高濃度の刺激物質により急激に炎症が惹起される場合と,低濃度の皮膚刺激物質が繰り返し作用することで徐々に炎症が惹起される場合とに分けることができる.刺激が極度に強い場合は熱傷と同様の症状を呈し,化学熱傷とよばれる.

【臨床症状】刺激物質が触れた部位に紅斑,浮腫,小水疱などが生じる(図4-2).慢性期には痂皮,苔癬化,色素沈着などが認められる.主婦湿疹・手湿疹とよばれる病型では,手皮膚の乾燥,落屑,手掌側の皮膚の亀裂や菲薄化,手指側面から背面の漿液性丘疹などが認められる.水仕事を頻繁に行う人(美容師,調理師,医療従事者,農業従事者など),紙幣・段ボールなど紙を扱う人などに比較的多く生じる.刺激により皮膚のバリア機能が障害され,かつそれら刺激物により炎症が惹起されると考えられる.低刺激物質に繰り返し曝露されるタイプの一次刺激性皮膚炎とされる.機械油や切削油,ガソリンなどから慢性的に

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