診療支援
治療

接触皮膚炎症候群
Contact dermatitis syndrome
相場 節也
(松田会松田病院部長/東北大学名誉教授)

病態

 接触感作の成立後,同一接触アレルゲン(ハプテン)に経皮的に反復曝露されることで原発巣の湿疹病変の悪化とともに,強い痒みを伴う皮膚病変がアレルゲンの接触範囲を越えて散布する場合を接触皮膚炎症候群とよぶ.しばしば自家感作性皮膚炎との異同が問題になる.実際,欧米にはこのような概念は存在しない.自家感作性皮膚炎とほぼ同義語であるが,自家感作性皮膚炎の原発巣には接触皮膚炎以外に,うっ滞性皮膚炎,貨幣状湿疹,熱傷,アトピー性皮膚炎なども含まれるため,接触皮膚炎が原因の自家感作性皮膚炎に限って接触皮膚炎症候群とよぶと考えると理解しやすい.散布疹としては,小丘疹,漿液性丘疹,貨幣状湿疹などが一般的で,まれに多形紅斑,急性汎発性発疹性膿疱疹,血管炎などを認めることもある.

 同様に,紛らわしい疾患に全身性接触皮膚炎がある.全身性接触皮膚炎は,接触アレルゲンに感作されている人が,そのアレルゲンに吸入,内服,注射などにより非経皮的に曝露されることで全身性に中毒疹に似た反応をきたす状態である.その臨床症状は,汗疱,異汗症性湿疹,パッチテスト部の再燃,汎発性紅斑丘疹小水疱,多形紅斑,血管炎,蕁麻疹など多彩で,時に関節痛,頭痛を伴う.特に腋窩,陰股部などの間擦部に対称性に境界鮮明な紅斑をきたす全身性接触皮膚炎は間擦部屈曲部皮膚炎(intertriginous and flexural dermatitis)ともよばれ,水銀による本症が有名である.

【頻度】本疾患を対象とした統計は存在しない.以下に述べるような強いアレルゲンに曝露され,加えてアレルゲン曝露回避の遅延,不十分ないしは不適切な治療により誘発される.アレルゲンとしては,フラジオマイシン,ゲンタマイシン,クロラムフェニコールなどの抗菌薬,クロトリマゾールなどの抗真菌薬,ケトプロフェンなどのNSAIDs,一般用医薬品に含まれていることの多い局所

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