診療支援
治療

成人アトピー性皮膚炎
Adult atopic dermatitis
加藤 則人
(京都府立医科大学教授)

病態

【病因・発症機序】遺伝的素因やさまざまな悪化因子によって増悪と軽快を繰り返す多病因性の疾患で,皮膚バリア機能の低下が病態形成に重要である.

 遺伝的要因として,表皮のバリア機能に重要なはたらきをもつ天然保湿因子のもとになるフィラグリンの遺伝子の機能喪失型変異などが報告されている.

 皮膚バリア機能の低下のために,汗や唾液,洗浄剤のすすぎ残しなど日常生活における軽微な刺激で非特異的な皮膚炎(=湿疹)が生じやすい.

 皮膚バリア機能が低下した皮膚から侵入したアレルゲンに対して感作(経皮感作)が成立すると,それらのアレルゲンによるインターロイキン(IL)-4やIL-13などの2型サイトカインを介したアレルギー炎症も病態形成に重要である.

 ヒスタミン,神経ペプチド,2型サイトカインなどさまざまな痒みのメディエータによって痒みが生じる.アトピー性皮膚炎患者の皮膚では,痒みを知覚する神経線維の表皮への伸長による痒み過敏が生じることも知られている.

 皮膚炎の局所では,炎症による皮膚バリア機能のさらなる低下や被刺激性の亢進,搔破の刺激,経皮感作とアレルギー炎症などによって湿疹がますます悪化する悪循環が生じ,慢性化,難治化の要因になる.


診断

【問診で聞くべきこと】患者の多くは,幼小児期から湿疹の悪化と軽快を繰り返している.いつ頃から湿疹がみられるか,子どもの頃に肘の内側などに湿疹ができて受診したことや薬を塗ったことがあるか,皮疹はステロイド外用薬による治療に反応したか,などを問診する.喘息やアレルギー性鼻炎などのアトピー素因の有無も問診すべきである.いつ頃から今回の皮疹が出現または悪化したか,どのようなきっかけでよくなったり悪くなったりするか,を問診することも大切である.医師による評価に加えて,患者の痒みの程度を把握するため,痒みの程度を0点:「痒みなし」から,10点:「想像できる最も強い痒み」

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