診療支援
治療

手湿疹
Hand eczema
高山 かおる
(済生会川口総合病院主任部長)

病態

 手湿疹は主に外来性の刺激物質や接触アレルゲン(ハプテンや蛋白抗原)が皮膚に接触することによって発症する湿疹病変である.

【頻度】本邦での疫学調査はないが,海外の論文を参考にするとおよそ罹患率が10%程度で,生涯罹患率が15~30%と,高い頻度で発症する.女性のほうが男性より多い.

【病因・発症機序】職業上で頻繁に使用する物質が原因になるが,そもそもアトピー性皮膚炎があり,バリア機能が弱いことなどが発症リスクの要因となる.機序は刺激性接触皮膚炎,アレルギー性接触皮膚炎,蛋白質接触皮膚炎があり,刺激性接触皮膚炎の頻度が最も高い.原因物質は多岐にわたるが,職業で問題になるものをまとめた(表4-3)


診断

【鑑別診断で想定すべき疾患】手白癬,疥癬,乾癬,掌蹠膿疱症,皮膚筋炎に起こる角化性の紅斑(mechanic's hand)などが挙げられる.顕微鏡検査,手以外の部位の病変の有無,特徴的形態や合併症の有無,場合によっては皮膚生検などを行って鑑別する.

【問診で聞くべきこと】アトピー性皮膚炎の既往はあるか,いつからなのか,悪化するタイミングがあるか,職業は何か,趣味は何かなどを聞く.

【臨床症状からの診断】ひと口に手湿疹といっても臨床はさまざまである.丘疹,小水疱,紅斑のほか,角化,亀裂などが混在する.角化型手湿疹,進行性指掌角皮症,貨幣状型手湿疹,再発性水疱型(汗疱型)手湿疹,乾燥・亀裂型手湿疹などの形をとる.痒みを通常は伴うが,原因物質によっては灼熱感や,亀裂のための痛みを訴える場合が少なくない.

【必要な検査とその所見】アトピー素因がベースにあるかは問診のほか,血清IgE値やダニ・ハウスダストに対するRASTが陽性となることが参照になる.職業や趣味などから原因物質となりうるものを推定し,物質を特定するにはスキンテストを行う.蛋白質接触皮膚炎を疑う場合にはプリックテスト,アレルギー性

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