病態
痒疹は痒疹丘疹を主徴とする反応性皮膚疾患である.痒疹丘疹は強い痒みを伴う孤立性の丘疹を指す.搔破により頂部にびらんを生じることもある.急性痒疹,亜急性痒疹,慢性痒疹に分類される.急性痒疹は滲出傾向の強い痒疹丘疹で,小児ストロフルスもこれに相当する.痒疹は病理学的に真皮の浸出反応を伴う炎症反応であり,表皮細胞や真皮成分の増殖を認める.
【頻度】急性痒疹や慢性痒疹の疫学は明らかでないものの,診察する機会は比較的多い.日本皮膚科学会による多施設横断四季別全国調査の結果によると,皮膚科受診患者のうち痒疹患者の占める割合は,病型が明らかではないものの,約2%であった.
【病因・発症機序】アレルギー,異物反応など諸説ある.発症にかかわる要因は,虫刺によるものと何らかの背景疾患を伴う症候性に大別される.症候性の要因として内分泌疾患,腎障害,肝胆道系疾患,血液疾患,悪性腫瘍,妊娠などがある.
【臨床症状】①急性痒疹:米粒大までの浮腫性丘疹,漿液性丘疹,充実性丘疹が孤立性にみられ,搔破による頂部びらんを伴うことがある.体幹・四肢伸側に分布し,数週間にわたり消長を繰り返す.②慢性痒疹:数週間~数か月持続する充実性の痒疹丘疹で,結節性痒疹と多形慢性痒疹に分類される.結節性痒疹は「結節性痒疹」の項(→)を参照されたい.多形慢性痒疹は痒みの強い蕁麻疹様丘疹で始まり,徐々に常色~淡褐色の充実性丘疹へと変化する.
診断
特徴的な臨床像と経過から診断に至る.以下に挙げた疾患との鑑別を要する症例では,それぞれに特化した検査を行う.
【鑑別診断で想起すべき疾患】疥癬,アトピー性皮膚炎,水疱性類天疱瘡,痒疹型表皮水疱症,Grover病などとの鑑別を要する.
【問診で聞くべきこと】発症時の状況(皮膚病変の有無,体調,投薬の有無など),罹病期間,アトピー性皮膚炎の病歴,基礎疾患の有無を確認する.直近で実施された健診結果も
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