診療支援
治療

汎発性(全身性)皮膚瘙痒症
Generalized pruritus
佐藤 貴浩
(防衛医科大学校教授)

病態

 汎発性皮膚瘙痒症で最も多いのは加齢による皮膚の乾燥が誘因となったものである.一方,症候性に生じるものとしては腎不全,糖尿病,肝障害,甲状腺機能異常,Hodgkinリンパ腫,真性多血症といった血液疾患やほかの固形腫瘍,神経疾患などがある.また,妊娠やHIV感染,薬剤,心因性疾患などと関連する瘙痒症もある.

 これらの状況下における痒みの機序の多くは十分に解明されておらず,いまだ研究途上にある.一般に抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)の効果が限定的であることが多いため,ヒスタミン以外の起痒物質,すなわちサブスタンスPや,トリプターゼなどのプロテアーゼ,セロトニンなど,さまざまなものがかかわっているといわれている.さらに血液透析患者や慢性肝疾患患者ではオピオイド受容体を介した中枢性の痒みが,また胆汁うっ滞時の痒みではlysophosphatidic acidの関与もいわれている.加齢や乾燥での痒みは表皮内神経伸長が原因といわれてきたが,皮膚Merkel細胞の減少が重要な要因との考えも出てきている.さらに糖尿病や神経変性疾患ではsmall fiber neuropathyの関与も考えられている.


診断

 明らかな皮膚症状がなく痒みを訴える.ただし皮膚乾燥の所見はあってもよい.また腎不全,透析患者,糖尿病,慢性肝疾患患者では痒疹(主に結節性痒疹)を伴っていることがある.その場合,本邦の「皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020」における汎発性皮膚瘙痒症に厳密には当てはまらないのだが,結節性痒疹は慢性的な皮膚の痒みと持続的搔破による2次的病変ととらえることもできる.痒疹結節部だけでなく,結節間の一見変化のない皮膚も含めて広い範囲に痒みを訴えているのが通例であり,手の届く部位にしか結節がみられないのであれば汎発性皮膚瘙痒症があると考えるのが妥当である.

 訴える症状は単に「皮膚が痒い」というもの

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