診療支援
治療

結節性紅斑
Erythema nodosum:EN
谷川 瑛子
(慶應義塾大学准教授)

病態

 結節性紅斑(EN)は溶連菌,薬剤など多種の要因によって誘発される反応性皮膚病変である.臨床的に下腿伸側に有痛性の紅色皮下硬結を生じ,病理組織学的に皮下脂肪小葉間隔壁を炎症の主座とする脂肪織炎の一型である.ENは症状名であり(診断名としても使用されている),臨床的にENをみた場合,さまざまな疾患を想起して各種検査を実施することが肝要である.

【頻度】女性に多く,罹患率は10万人あたり1~5人,20~30歳代の女性に好発し,日常診療で出合うことの多い疾患である.

【病因・発症機序】溶連菌による上気道感染に続発するものが多く,その他の細菌・真菌・ウイルス感染症のほか,結核菌,らい菌,クラジミア,リケッチアなど,薬剤ではサルファ剤,テトラサイクリン系薬,経口避妊薬などが原因として知られている.基礎疾患としてBehçet病,サルコイドーシス,潰瘍性大腸炎,Crohn病,血管炎,リンパ腫などの皮膚症状として合併または原疾患に先行するが,1/3以上は原因不明の特発症例である.発症機序は上記細菌など多彩なアレルゲンに対する遅延型過敏反応または免疫複合体によるⅢ型アレルギー機序が想定されているが,いまだ不明な点が多い.

【臨床症状】(図6-3)①急性型:両下腿伸側に母指頭大から鶏卵大まで境界不明瞭な有痛性紅斑が多発し,皮下硬結を触れ,熱感と圧痛が強い.38℃以上の発熱,関節痛など併発する.時に上肢,大腿,顔面に生じる.②慢性型:症状を繰り返し,炎症症状が乏しく硬結性紅斑との鑑別が難しい.治癒後に色素沈着をしばらく残す.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】結節性動脈炎,Behçet病,血栓性静脈炎,Sweet病,硬結性紅斑,深在性エリテマトーデス,サルコイドーシス,うっ滞性または硬化性脂肪織炎,リンパ腫,皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫など.

【問診で聞くべきこと】前駆症状:咽頭痛,発熱,倦怠

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