病態
表皮細胞の角化や剝離過程に関与する遺伝子の異常が原因で,全身の皮膚が乾燥して,鱗屑,落屑を生じる疾患群である(表8-1)図.
【頻度】尋常性魚鱗癬は常染色体半優性遺伝性で,罹患率は約250人に1人と最多である.また,伴性遺伝性魚鱗癬は伴性劣性遺伝であり,男性2,000~6,000人に1人である.重症魚鱗癬では常染色体優性遺伝性の表皮融解性魚鱗癬が最も罹患率が高く,10万~20万人に1人であるが,常染色体劣性遺伝性魚鱗癬では20万~30万人に1人,同様に常染色体劣性遺伝性の葉状魚鱗癬では50万人に1人,道化師様魚鱗癬では30万人に1人といわれている.症候性の魚鱗癬は非常に稀少であり,例えばNetherton症候群では100万人に1人といわれる.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】成人期以降で発症した場合,後天性魚鱗癬を考える.悪性リンパ腫,白血病をはじめとする悪性腫瘍やサルコイドーシス,甲状腺機能低下症,Hansen病,SLEなどの全身性疾患,ニコチン酸などの薬剤投与でも尋常性魚鱗癬に類似の皮疹を生じることがある.また,乾癬,毛孔性紅色粃糠疹などの炎症性角化症が,時に先天性魚鱗癬様紅皮症に類似する臨床像を呈することもあり,病理組織診断が鑑別に有用である.
【問診で聞くべきこと】先天性と後天性は,発症年齢などの現病歴,家族歴,臨床経過,合併症や基礎疾患の有無などから鑑別される.皮疹以外に,他臓器にも特徴的な随伴症状を伴う症候性魚鱗癬に留意する.
【臨床症状からの診断】(表8-1)図
1.非症候性魚鱗癬:随伴症状を伴わない
1)頻度の高い軽症の魚鱗癬
①尋常性魚鱗癬(図8-1a)図:出生時には無症状だが,生後数か月に発症.四肢伸側,背部に過角化,鱗屑,乾燥がみられ白色粃糠様,小葉状鱗屑が固着するが,四肢屈側は避ける.冬期に増悪するが,夏には目立たない.掌蹠皮膚紋理の増強(多紋理徴候)も特徴
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