病態
常染色体優性に遺伝する先天性角化異常症であるが,思春期以降に発症し,胸部,背部,頭部,鼠径部などの脂漏部位に黄褐色の痂皮を伴った丘疹が多発し,それらが癒合し疣状の塊となりびらんを形成する.夏季に悪化し悪臭を伴う.
【頻度】英国では36,000~55,000人に1人,スロベニアで10万人に3.8人,デンマークで10万人に1人ほどの有病率と報告されている.発症機序より考えて,本邦でも1,000~4,000人ぐらいの患者数と推測されるが,定期的に医療機関で治療を受けている患者数は,この推定患者数よりも少ないと予測される.
【病因・発症機序】表皮角化細胞に発現するカルシウムポンプの1種のSERCA2を規定するATP2A2遺伝子に変異が存在し,正常に機能するSERCA2蛋白の発現量が減少することによるハプロ不全の機序で発症する.表皮角化細胞内のカルシウムイオン濃度が異常亢進することで,有棘層での健常な角化制御ができずに,異常角化,個別角化やデスモソームでの脆弱な細胞間接着を引き起こし,特有の皮膚症状を発病する.
【臨床症状】①黄色から褐色の痂皮を付着した硬い丘疹が胸,背中,顔面,頭,腋窩,鼠径部など脂漏部位に集簇し,さらには疣状の過角化局面を形成する(図8-3)図.痂皮の下床にはびらんや潰瘍が形成され,まれには水疱を形成する.時に激しい痒みを伴い,しばしば浸潤し悪臭を放つ.気温の高くなる梅雨時から夏にかけて増悪し,乾燥し気温の低下する冬季にかけて軽快する.運動や日光への露出でも増悪する.爪の変形や掌蹠の角化,舌や口腔内に白色の飛び石様の丘疹を生じることもある.時に精神知能の障害を合併することがある.②びらん面に細菌やヘルペスウイルスの感染が生じ,伝染性膿痂疹やKaposi水痘様発疹症を併発することがしばしばある.③まれに胎生期の変異によりBlascho線に沿った限局型のDarier病
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