診療支援
治療

乾癬 最近の動向
佐伯 秀久
(日本医科大学教授)

1.乾癬(尋常性乾癬)に関する動向

 2019年に「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2019年版)」が発刊され,その英語版が2020年3月に刊行された.日本語版にはリサンキズマブ,セルトリズマブ ペゴルとチルドラキズマブ,英語版にはセルトリズマブ ペゴルとチルドラキズマブの記載は本文に含まれていない.以下,日本語版に記された内容を中心に最近の動向を記載する.

 乾癬に対する生物学的製剤は,TNF-α抗体(インフリキシマブ,アダリムマブ,セルトリズマブ ペゴル),IL-12/23p40抗体(ウステキヌマブ),IL-23p19抗体(グセルクマブ,リサンキズマブ,チルドラキズマブ),IL-17A抗体(セクキヌマブ,イキセキズマブ),IL-17受容体A抗体(ブロダルマブ)の計10製剤が,2021年8月現在使用可能となっている(図9-1)

 インフリキシマブは初期量として体重1kgあたり5mgを静注することとなっている.6週の投与以後,効果不十分または効果減弱した場合には,投与量の増量または投与間隔の短縮が可能である.1回の体重1kgあたりの投与量の上限は,8週間の間隔であれば10mg,投与間隔を短縮した場合は6mgとし,最短の投与間隔は4週間とする.

 生物学的製剤による治療中には細菌・真菌・原虫・ウイルス感染に十分注意し,必要に応じて適切な検査および処置を行う.なおニューモシスチス肺炎は,市販後調査ではインフリキシマブ使用症例に際立って発症しており,TNF-α抗体を使用する際にはとりわけ注意が必要である.

 IL-17阻害薬に特徴的な副作用として真菌感染症,特にカンジダ症が挙げられる.皮膚および粘膜のカンジダ症が国内外で報告されており,IL-17シグナルを受容体レベルで広く阻害するブロダルマブでは最も高頻度で認められる.

 B型肝炎ウイルス(HBs)抗原が陰性でもHBs抗体もし

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?