診療支援
治療

先天性表皮水疱症
Epidermolysis bullosa
新熊 悟
(奈良県立医科大学准教授)

病態

 表皮水疱症は,表皮内もしくは表皮-真皮境界部の接着にかかわる蛋白の先天的な異常の結果,軽微な外力で容易に皮膚や粘膜に水疱やびらんを生じる遺伝性疾患である.これまでに15以上の責任遺伝子が同定されているが,変異のある責任遺伝子および変異の種類によって臨床症状は大きく異なる.

【病因・発症機序】臨床症状と電子顕微鏡で観察される水疱形成部位により,①単純型(表皮内で裂隙形成),②接合部型(lamina lucidaで裂隙形成),③栄養障害型(lamina densa直下で裂隙形成),④キンドラー型(複数部位で裂隙形成)の4つに大別される(表10-3).分子生物学の進歩により,各病型における責任遺伝子が数多く明らかになった.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】表皮融解性魚鱗癬,ポルフィリン症,自己免疫性水疱症(天疱瘡,類天疱瘡,後天性表皮水疱症,Duhring疱疹状皮膚炎など),水疱型エリテマトーデス,薬疹,腸性肢端皮膚炎,伝染性膿痂疹,虫刺症など.

1.臨床症状からの診断

 まず,患者の病歴と家族歴を詳しく聴取し,遺伝形式を確認する.次いで,臨床的表現型を評価する.限局型もしくは全身型といった皮疹の分布形式や,皮膚や皮膚外病変の症状に着目する必要がある.また,瘢痕や稗粒腫の有無などの特徴的な皮疹は,病型診断に有用である.重症例では,慢性の炎症や低栄養状態に伴い,貧血や腎機能障害などを合併することがあるため,血液検査などの全身状態の評価を定期的に行う必要がある.以下に,表皮水疱症の代表的な病型の臨床的特徴について記載する.①単純型表皮水疱症:水疱が手掌,足底に限局している場合には最も軽症である限局型(旧称Weber-Cockayne型),全身性の水疱が疱疹状に環状配列を示す場合には重症汎発型(Dowling-Meara型)が考えられる.中等症汎発型(Köbner型)はその中間に位置す

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