病態
妊娠を契機に発症する膿疱性乾癬(汎発型)の一亜型である.発熱,浮腫,関節痛,全身倦怠感などの全身症状とともに無菌性膿疱が多発する.主に妊娠後期に急速に発症し,分娩とともに軽快することが多い.
【病因・発症機序】①病因は不明であるが,妊娠や性周期によるプロゲステロンなどのホルモン環境の変化が関与している可能性が高い.②また,膿疱性乾癬の病因遺伝子であるIL36RNの遺伝子変異は,近年本症の病因としても報告された.③最近では,さまざまな自己炎症性疾患の発症にかかわるCARD14遺伝子の変異も本症の病因であることが報告された.
【臨床症状】紅斑,浮腫が初発し,斑状ないし局面状紅斑を生じ,その周辺に多数の膿疱を生じるKaposi型と,疱疹状配列をとる紅暈を伴う膿疱群として初発し,やがて周辺へ拡大し環状,集簇性となるvon Hebra型がある.膿疱は1~2mm大の無菌性で,小水疱は混じない.臍,乳房,大腿内側,肘窩など四肢の屈曲部,頸部,肘窩,鼠径部などの間擦部から出現し,全身に拡大する.皮疹が口腔粘膜や頰粘膜に及ぶこともある.皮疹消褪後には強い色素沈着を残す.発熱,全身倦怠感,悪心,嘔吐,下痢,リンパ節腫脹,脾腫などの全身症状を伴うこともある.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】①重症薬疹の一型である急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP:acute generalized exanthematous pustulosis)との鑑別が最も重要である.AGEPは歴史的に膿疱性乾癬(汎発型)から分離された疾患であるが,大部分が薬剤に起因することから,妊娠中の薬剤投与で発症した場合には鑑別が必要となる.②妊娠中に水疱が発症・再燃する場合は,妊娠性疱疹との鑑別が必要である.③その他,膿疱をきたす疾患として,角層下膿疱症,汎発性稽留性肢端皮膚炎,急性汎発性膿疱性細菌疹が挙げられる.
治療
妊娠中にみら
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