診療支援
治療

膠原病 最近の動向
長谷川 稔
(福井大学教授)

1.病態に関する動向

 膠原病の発症機序は不明だが,遺伝的素因と環境要因により発症すると考えられている.感染症などの外的要因によって自己免疫が誘導されると思われるが,トレランスの破綻や自己免疫の拡大するメカニズムの詳細はわかっていない.例えば,全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)においては,エピジェネティックな変化,免疫複合体の沈着,自己抗体を介した組織障害などが慢性の炎症と不可逆的な臓器障害をきたしうる(図12-1)

 遺伝的素因としては,以前から主要組織適合遺伝子複合体が疾患感受性と強い遺伝的相関を示すことが知られている.また,近年はゲノムワイド関連解析による網羅的探索により,多数の疾患感受性遺伝子が同定されている.例えばSLEでは,インターフェロン(IFN)やToll様受容体などの自然免疫と関連した分子,リンパ球の活性化と関連した分子,免疫複合体形成や異物除去にかかわる分子,炎症に関する分子などに分類することができ,これらのなかには他の膠原病の疾患感受性遺伝子として知られるものも少なくない.

 疾患によって病態にかかわる細胞は異なるが,形質細胞様樹状細胞から産生されるⅠ型IFN,骨髄系樹状細胞から産生されるBAFF(BLyS),B細胞から産生されるIL-6,T細胞からのIL-17やIL-21,単球/マクロファージからのTNF-α,IL-6,IL-8などがさまざまな臓器炎症に関与すると考えられる.

 ウイルス感染,アポトーシス細胞,好中球細胞外トラップ(NETs)はⅠ型IFN産生を誘導し,制御性T細胞の抑制によるトレランスの破綻,BAFFの産生促進によるB細胞の増殖やトレランス破綻に関与しうる.

 細菌感染症,組織障害,紫外線などは,TNF-α産生を亢進させて好中球や単球/マクロファージを活性化する.また,IL-6産生を介

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