病態
下腿に生じる皮膚潰瘍を,いわゆる“下腿潰瘍”とよぶが,これには複数の疾患が含まれる.その内訳は,静脈性疾患が8割,動脈性疾患が1割,血管炎など他の疾患が1割といわれている.一方,“下腿潰瘍”は慣用的に静脈うっ滞性潰瘍を指すことも多い.
【病因・発症機序】静脈性,動脈性潰瘍は微小な外傷を契機に生じることが多い.静脈性潰瘍は,弁不全による1次性下肢静脈瘤(図13-12)図,深部静脈血栓後遺症(図13-13)図,高齢者や麻痺患者の下腿筋ポンプ機能低下,肥満,立ち仕事などで下肢静脈高血圧の状態が続くと難治となる.動脈性潰瘍は閉塞性動脈硬化症,重症下肢虚血が原因となる.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】静脈性であれば,下肢静脈瘤,深部静脈血栓後遺症,下腿筋ポンプ機能低下が主であり,動脈性を疑えば閉塞性動脈硬化症を考える.他疾患は血管炎,リベド血管症,膠原病,関節リウマチ,抗リン脂質症候群,クリオグロブリン血症,壊疽性膿皮症,Werner症候群,糖尿病,また壊死性筋膜炎,ガス壊疽,非結核性抗酸菌症などの感染症,ハイドロキシウレアなど薬剤性,悪性腫瘍,リンパ浮腫,低温熱傷,外傷,褥瘡など多岐にわたる.
【問診で聞くべきこと】①静脈性潰瘍は,静脈うっ滞が重症化して生じる.このため,むくみやうっ滞性皮膚炎の痒み,下肢の倦怠感や重さ,こむら返りなどを自覚していることが多い.冷感はなく,むしろ火照る.既往に深部静脈血栓症がないか,また調理師などの立ち仕事も原因となるため,職歴も聴取する.②動脈性潰瘍では足が冷えないか,また歩いていてすぐ足が痛くなったり,疲れて立ち止まったり,いわゆる間欠的跛行がないかを問診する.
【臨床症状からの診断】①静脈性潰瘍は,うっ滞性皮膚炎やうっ滞性脂肪織炎に続発する.このため潰瘍周囲に皮膚炎や脂肪織炎を認める.また下肢静脈瘤が原因であれば,潰瘍上部に静脈瘤を確認できるこ
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