病態
ムチンは,細胞外基質の成分で,酸性ムコ多糖(グリコサミノグリカン:GAG)からなる不溶性の粘液で,線維芽細胞から産生される.
【病因・発症機序】明らかな病因は不明だが,IL-1やTNF-α,TGF-βといったサイトカインが線維芽細胞を刺激することで,過剰に産生されたムチンが,膠原線維間に沈着し,浮腫や膠原線維の膨化,断裂を生じて症状を引き起こすと考えられている.
【臨床症状】表皮変化の少ない,非圧痕性の浮腫を認め,熱感,疼痛などの炎症所見は通常伴わず,症状により,丘疹や結節,局面,腫瘤などを形成する.
【病理組織学的検査】ムチンは,主に真皮に沈着する.HE染色では空隙としてみられ,特殊染色のアルシアンブルー(Alb)染色(pH 2.5)で青色,トルイジンブルー染色で赤紫色の異染性を示し,コロイド鉄で青色を示す.現在では,ムチンの構造が明らかになり,各種ムチン抗体による免疫染色も行われている.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】粘液水腫性苔癬などの全身型は,全身性強皮症,それ以外の限局型の場合は,斑状強皮症,悪性リンパ腫,肉芽腫性疾患,円形脱毛症,真菌症など.
【問診で聞くべきこと】内分泌疾患(甲状腺機能異常や糖尿病)やウイルス感染,肝疾患,膠原病,血液疾患を含めた悪性腫瘍などの既往,また外傷や外科治療歴.
【臨床症状からの診断】①脛骨前粘液水腫:甲状腺機能亢進(Graves病,Basedow病)によることが多い.Graves病患者の0.5%程度(海外では約5%)にみられる.抗TSH受容体抗体による線維芽細胞のTSH受容体への刺激によるムチン産生亢進が原因と考えられている.両下腿前側面の硬結,結節で,非圧痕性浮腫を認め,左右対称で毛孔開大し,オレンジの皮様の外観で,多毛を呈する.足関節や膝までも生じることがある(図14-3)図.2次性のリンパ流障害を認める.②汎発性粘液水腫:甲状腺機
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