診療支援
治療

石灰沈着症
Calcinosis cutis
吉崎 麻子
(東京大学)

病態

 皮膚石灰沈着症は,不溶性のカルシウム塩が皮膚組織に沈着する疾患である.

【頻度】まれな疾患ではなく,局所性・全身性の疾患が背景となり出現する.

【病因・発症機序】以下,①~⑥などに分類される.①転移性石灰沈着症:高カルシウム血症または高リン血症を伴い,血管壁や臓器に石灰沈着が起こる.基礎疾患としては,副甲状腺機能亢進症や慢性腎不全の頻度が高い.②tumoral calcinosis:まれな家族性疾患であり,血中リン濃度の上昇と正常カルシウム値を示す.若年者の大関節近傍,特に股関節,肩関節,肘関節周囲の軟部組織に大きな腫瘤としてみられる.③栄養障害性石灰沈着症:血中カルシウム・リン濃度には異常がなく,壊死組織や線維化などの皮膚損傷部に石灰沈着を認める.外傷,感染症後や,皮膚筋炎,全身性強皮症,全身性エリテマトーデスなどの膠原病患者にみられることも多い.四肢や臀部をはじめ,さまざまな部位に生じる.④特発性石灰沈着症:健常人に生じる皮下石灰沈着であり,代謝異常を伴わない.陰囊に多発性結節としてみられるものを陰囊部石灰沈着症とよぶ.⑤calciphylaxis:慢性腎不全の患者に発生する血中カルシウム・リン濃度の異常を伴う血管壁の石灰沈着であり,循環障害により皮膚の虚血・壊死を伴う.⑥医原性石灰沈着症:カルシウム製剤の点滴漏れなどにより発症する.

【臨床症状】大きさはさまざまで,白色の丘疹,結節,または斑状の皮下硬化性局面として認める.水疱様外観や潰瘍を形成することもある.沈着物は白色~黄白色で,チョーク様ないし骨様である.


診断

 血中カルシウム・リン濃度を測定するとともに,基礎疾患の有無に留意する.石灰沈着の性状の確認のために,局所および主要臓器のX線・CT撮影を行うことも有用である.皮膚生検では,HE染色では淡青色~深青色,von Kossa染色では黒色に染色される石灰化を確認す

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