病態
国民の栄養状態がよい日本での通常の食生活では生じえないと考えられるが,消化管手術や心身障害などによる摂取障害,アルコール飲料などの食生活の偏り,などによってビタミン欠乏症が生じうる.ビタミン欠乏症によって生じる皮膚症状の発症機序については解明されていない.
【臨床症状】(表14-3)図主症状に皮膚粘膜症状が含まれるものについて列挙する.①ビタミンA欠乏症(化学名レチノール):皮膚の乾燥と毛孔角化が主な皮膚症状である.角膜乾燥や夜盲症などの眼症状を生じうる.②ビタミンB1欠乏症(化学名チアミン):神経障害や心不全などの脚気として知られる症状が出現する.皮膚では乾燥をきたす.③ビタミンB2欠乏症(化学名リボフラビン):口角のびらん,口唇炎,顔面や外陰部などの脂漏部位の皮膚炎,咽頭痛などの皮膚粘膜症状を生じる.羞明が生じることもある.④ビタミンB6欠乏症(化学名ピリドキシン,ピリドキサール,ピリドキサミン):顔面,頭部,頸部,肩,臀部,会陰部などに生じる脂漏性皮膚炎様皮疹が主体.口角炎や結膜炎などのビタミンB2欠乏で認められるような粘膜症状も生じうる.傾眠,末梢神経障害,知覚障害などの神経症状も生じうる.光線過敏症,舌炎,口唇炎などのナイアシン欠乏に伴う症状の合併もきたす.ビタミンB6はトリプトファンからナイアシンへの変換に必要なため,ビタミンB6の欠乏によりペラグラ類似の症状をきたす場合がある.⑤ビタミンB12欠乏症(化学名シアノコバラミン):舌炎(糸状乳頭の萎縮を伴うHunter舌炎),口角炎,毛の脱色素,手掌線や屈曲部などを中心とした皮膚の色素沈着などが生じる.皮膚の色素沈着はAddison病の際に認められるものに類似するが,副腎不全は伴っていない.皮膚粘膜外症状としては,知覚障害,感覚障害,運動失調,痙縮,対麻痺などの亜急性連合性脊髄変性症と巨赤芽球性貧血が代表的であ
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