病態
必須アミノ酸のトリプトファンから生成される,ビタミンB群に属するニコチン酸(ナイアシン)の欠乏が主な原因で生じる,皮膚症状,消化器症状,神経症状を3主徴とした疾患である.
【病因・発症機序】日本での通常の食生活では生じえないと考えられるが,消化器疾患,消化管手術,アルコール依存症患者,心身障害などによる摂取障害,さらには内因性のニコチン酸産生に影響する薬剤(5-FUなど)などにより生じうる.ニコチン酸欠乏による諸症状発症の機序については不明である.
【臨床症状】3主徴がすべて揃わない場合も多い.①皮膚粘膜症状(図14-8)図:手背,前腕,顔面,頸部などの日光露出部や物理的刺激を受けやすい部位に灼熱感を伴った瘙痒性皮疹を生じる.色素沈着も混じた紫紅色の紅斑で,水疱やびらん,潰瘍を伴うことがある.鱗屑,痂皮も伴う.慢性化すると多形皮膚萎縮状態となる.頸部では特徴的な首飾り状の分布を示す(カザール頸帯).爪の変形や脱毛,口角炎や口内炎などの口腔粘膜症状も生じうる.②消化器症状:食欲低下,嘔吐,腹痛,下痢,味覚障害などが生じる.③神経症状:不眠症,倦怠感,神経過敏,意欲障害,記憶障害,うつ,認知症,運動障害などが生じる.
診断
特徴的な諸症状や血中・尿中ニコチン酸あるいはアミノ酸分析による血中トリプトファンの低値から本症を疑い,ビタミン補給による急速な症状の改善によって診断する.
【鑑別診断で想起すべき疾患】光線過敏症や他の栄養素欠乏症.特に晩発性皮膚ポルフィリン症や亜鉛欠乏症など.
治療
トリプトファン,ニコチン酸やニコチン酸アミドの投与.ニコチン酸は,頭痛や紅潮などを生じやすいため,ニコチン酸アミドのほうが推奨される.
Px処方例
ニコチン酸アミド薬散 1回100mg(成分量として) 1日1~3回
【予後と経過】神経精神症状は48時間以内に軽快傾向を示すが,遷延する場合がある.皮膚症状は
関連リンク
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- 臨床検査データブック 2023-2024/ニコチン酸《ナイアシン》,ニコチン酸アミド《ニコチナミド》
- 今日の治療指針2023年版/味覚障害
- 新臨床内科学 第10版/ビタミンの欠乏症と過剰症,依存症
- 新臨床内科学 第10版/(11)パントテン酸欠乏症・過剰症
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- 新臨床内科学 第10版/(2)栄養・代謝障害による認知症
- 新臨床内科学 第10版/アルコール症とアルコール性神経障害
- 新臨床内科学 第10版/2 有機溶剤中毒
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