病態
凍瘡は寒冷刺激に伴う2次的炎症により生じる疾患であり,真冬ではなく,初冬や初春などの1日の最低気温と最高気温の差が10℃以上となる時期に好発する.以前は小児に圧倒的に多くみられたが,近年では中年女性に多くみられる皮膚症状である.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】滲出性紅斑,凍瘡様紅斑,凍瘡状狼瘡,固定薬疹などが鑑別を要する疾患である.
【問診で聞くべきこと】暖房の普及と住宅環境の改善によって,本症は以前よりも明らかに頻度が減少しているが,本人や家族の意思で暖房を使用しないために凍瘡を生じる例がある.また,膠原病〔Sjögren症候群(SjS),SLE〕,血液疾患(骨髄異形成症候群),そしてサルコイドーシスでは凍瘡様の皮疹を主訴に来院する例がまれではないため,注意を要する.
【臨床症状からの診断】凍瘡は,1指もしくは1趾が全体的に暗赤色調に腫脹する樽柿型と,手指や足趾に滲出性紅斑が多発する多形紅斑型(図19-10)図の2通りがあり,時に水疱,びらんや潰瘍形成を伴う.耳輪部から耳朶部も凍瘡の好発部位であり,こちらも時に潰瘍を形成する.凍瘡は温まると痛痒さを訴える例が多く,本症の特徴の1つである.通常の凍瘡でも手掌や足底にみられることがあるが,多発例や,春から秋にかけてみられる例などでは凍瘡様紅斑の存在を考えて,SLEやSjSを否定する必要がある.
【必要な検査とその所見】凍瘡自体に必須の検査はないが,鑑別疾患である膠原病(抗核抗体,抗SS-A抗体),サルコイドーシス(ACE,リゾチーム,カルシウム値),骨髄異形成症候群に伴う異常の有無を検索する.高齢者では末梢性動脈疾患や甲状腺機能低下症に伴って凍瘡を呈する例もあるので,足背動脈の触知,誘因のない体重増加の有無の確認などを行う.
【病理組織学的検査】典型例では皮膚生検は不要であるが,凍瘡様狼瘡,固定薬疹との鑑別が困難な症例では生検を
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