診療支援
治療

凍傷
Frostbite
高橋 和宏
(上組町ほほえみスキンクリニック)

病態

 組織の凍結によって生じる皮膚ならびに周囲組織,臓器障害であり,皮膚科救急診療上念頭におくべき疾患の1つである.冬山や海での遭難など厳しい寒冷曝露環境からの搬送では広範囲凍傷,寒冷地での生活環境内寒冷曝露や冬季競技では,手指,足趾,耳,鼻の凍結による局所限局性凍傷が生じる.症状は皮膚にとどまらず,外観のみで判断が困難な深部に至る損傷,組織破壊や,2次的に引き起こされる全身症状を伴うことがあることを念頭に診療する必要がある.凍結している組織を急速に解凍してしまうと細胞破壊が引き起こされる.組織障害を最小限にする解凍法を実施する必要がある.

【臨床症状】障害の深達度により,Ⅰ度:表皮に限局,Ⅱ度:真皮までの障害,Ⅲ度:脂肪織より深部に至るに分類する.皮膚症状はⅠ度では紅斑,腫脹,Ⅱ度で水疱形成,Ⅲ度では潰瘍形成,組織壊死が起こる.


診断

 患者の意識があるとき,付き添いの説明や目撃情報などから受傷した事情が明らかなときの診断は容易である.

【必要な検査とその所見】血液検査では炎症反応,細菌感染の有無,多臓器への障害の程度を診る.CT,MRI画像は,皮膚組織損傷の程度や範囲,深部への損傷波及の程度,多臓器障害を検索するうえで有用である.


治療

 深達性の凍傷では救命的全身管理が必要な場合,さらに受傷機転により以後の全身状態悪化が疑われる症例では外科や麻酔科へ,患肢切断の適応判断は整形外科,形成外科へコンサルトする.

 急性期は凍結の解除,血流改善,疼痛対策,その後は損傷した皮膚組織への局所療法が治療内容である.治療開始時にまだ凍結がある場合は至適な温度で解凍する.解凍速度は緩徐または急速すぎると組織の損傷を助長し疼痛も強くなる.40~42℃のお湯が至適温度であり,患部を入れ解凍する.

 組織の解凍直後は組織損傷の度合いや深達度の確定は困難であり,継時的な変化に応じた臨機応変な治療方法

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