病態
いずれも顔面を中心にした色素斑の増加である.いわゆる肝斑は「しみ」,雀卵斑は「そばかす」とよばれている.
【頻度】①肝斑の発症頻度は日本では1:14~1:39.発症者のほとんどが女性で男性にはまれ.アジア系,ヒスパニック系,アフリカ系に多い.②雀卵斑は性差はない.白人に多く,日本人では色白の人に多い.③後天性真皮メラノサイトーシスの性差は,男:女=1:9~1:13で圧倒的に女性に多い.台湾の疫学調査では女子の1.21%,男子の0.20%に発症しており太田母斑より高頻度である.人種差があり台湾,日本など東アジアに多い.
【病因・発症機序】①肝斑は紫外線,性ホルモンや副腎皮質ホルモンの異常によるメラノサイトの活性化が原因と考えられている.②雀卵斑は遺伝的素因によりメラノサイトが活性化され,メラノソームの増加をみるがメラノサイトの数は変化しない.MC1R遺伝子の関与の報告がある.③後天性真皮メラノサイトーシスは,女性ホルモン,紫外線,炎症性サイトカインなど,何らかの刺激により真皮メラノサイトの活性化により生じると考えられている.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】雀卵斑,後天性真皮メラノサイトーシス,両側性太田母斑,肝斑やリール黒皮症など各々が近い臨床像を示すことがある.両側性太田母斑は幼小児期より発症することが多く眼球結膜,口蓋などの粘膜に背色斑を伴う.色調は青色斑の上に点状茶褐色斑がある.リール黒皮症はびまん性の境界不明瞭な網状の紫褐色の色素沈着であり,慢性の接触皮膚炎の既往がある.
【問診で聞くべきこと】
①発症時期:雀卵斑は5歳頃から目立ち始め,夏季に色調が濃くなり,冬季には薄くなる.思春期に最も顕著になるが加齢とともに薄くなる.肝斑,後天性真皮メラノサイトーシスは成人で30歳代以降の発症が多い.②妊娠の既往やホルモン剤投与の有無:肝斑ではピルの内服や妊娠を契機に発症することが
関連リンク
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