診療支援
治療

Addison病
Addison's disease
藤田 靖幸
(市立札幌病院皮膚科医長)

病態

 後天性の慢性副腎皮質機能低下症の総称であり,感染症(結核・真菌・後天性免疫不全症候群)や自己免疫性機序などを背景とする.下垂体から分泌亢進したACTHやMSHがメラノサイトを活性化させ,全身の色素沈着をきたす.

【症状】副腎皮質ホルモンの欠落により,全身倦怠感,脱力感,筋力低下,食思不振,体重減少,低血圧,低血糖,低Na血症や高K血症をきたす.慢性期では食思不振など非特異的な症状にとどまるが,シックデイなどのストレスが加わると急性副腎不全をきたすことがある.皮膚粘膜の色素沈着が本症の90%で初診時にみられる.露光部(顔面・手背)・間擦部(肘・膝)・生理的色素沈着部(陰部・腋窩・乳輪)・手掌紋理・粘膜部・瘢痕部・爪甲に生じやすい.女性ではアンドロゲンが主に副腎由来であるため,腋毛・恥毛の減少を伴う.


診断

 倦怠感を伴う全身の色素沈着,特に手掌紋理に一致して増強している場合は,本症の可能性を考える.皮膚粘膜症状を契機として診断に至る例が少なくないため,皮膚科医の役割は大きい.早朝安静時の血中コルチゾール低値(18μg/dL未満),ACTH高値は本症を疑う.迅速ACTH負荷試験やACTH 2日間負荷試験で血中コルチゾールや尿中17-OHCSが増加しなければ,本症と診断される.

【鑑別診断で想起すべき疾患】薬剤性色素沈着(ミノサイクリンやTS-1などの抗悪性腫瘍薬)・黒色表皮腫・晩発性皮膚ポルフィリン症・原発性胆汁性肝硬変・銀皮症などが挙げられる.


治療

 糖質および鉱質コルチコイド補充を行う.過剰投与は医原性Cushing症候群を,過少投与は急性副腎不全を起こしうるため,内分泌専門医による治療が必要である.シックデイや周術期ではステロイドカバーを行う.

Px処方例 1)を用いるかもしくは1),2)を併用する.

1)コートリル錠(10mg) 1日2錠を2回に分服(朝食後1.5錠,夕食

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