診療支援
治療

先天性色素細胞母斑
Congenital melanocytic nevus
伊東 慶悟
(日本医科大学武蔵小杉病院准教授)

病態

【頻度】日本人の先天性色素細胞母斑の発生頻度は,Hidanoらによる5,387人の新生児の調査で148人(2.7%)に臨床的に色素細胞母斑があったとの報告(Pediatr Dermatol 3:140-144, 1986)があり,約3%弱と考えられる.

【病因・発症機序】臨床的には黒褐色の斑または丘疹で,一般に「ほくろ」とよばれ,以前から母斑細胞母斑という診断名が用いられている.母斑細胞母斑とは,母斑細胞が増殖した母斑のことである.母斑細胞とは,発生の段階で表皮にたどり着いたメラノブラストが,正常のメラノサイトに分化できなかった細胞である.つまり,母斑細胞を色素細胞様細胞ともいい換えられるので,母斑細胞母斑を色素細胞母斑として解説する.このことを理解するためにメラノサイトの発生から説明する.

1.メラノサイトの発生と母斑細胞の自然史(図21-11)

 メラノサイトの原基であるメラノブラストは,発生学的に胎生期の神経管に沿って形成される神経堤(neural crest)に起源を有し,Schwann細胞と同系統の細胞である.メラノブラストは,この神経堤の伸延に伴って胎生期の未分化間葉中を移動し,皮膚へと分布していく.ヒトでは,メラノブラストが胎生6~8週の時点で真皮に相当する間葉中に検出され,10週前後には胎児の表皮内へ到達し,さらに15~17週には毛芽部にも検出される.表皮に到達したが,メラノサイトに分化できなかった細胞を母斑細胞と名づけているが,色素細胞様細胞ともいい換えられる.一方で,表皮に到達できずに真皮内でとどまってしまった一群を,真皮メラノサイト系母斑(太田母斑や蒙古斑など)という.

2.母斑細胞の存在部位による分類

 母斑細胞はまず,表皮真皮境界部で孤立性に増殖する.この状態を単純黒子(lentigo simplex)という.その後,母斑細胞が表皮真皮境界部で2~3個

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