診療支援
治療

後天性色素細胞母斑
Acquired melanocytic nevus
伊東 慶悟
(日本医科大学武蔵小杉病院准教授)

病態

【頻度】非常に多い,ありふれた病変である.日本人では1人に平均約10個,白人では約20~50個存在するといわれている.

【病因・発症機序】出生時から存在する先天性色素細胞母斑に対し,出生時にはなく後天性に出現した色素細胞母斑を後天性色素細胞母斑という.生涯のさまざまな時期に生じうる.一方,母斑とは別のメラノサイトの良性腫瘍も存在するはずであるが,組織学的に母斑と良性腫瘍を厳密に分けられないので,メラノサイトの良性腫瘍も後天性色素細胞母斑のなかに含まれていると考えられる.

【臨床症状】

1.後天性母斑細胞母斑の4型

 臨床像と組織像を合わせて,下記の4型に分類される.①Miescher母斑(図21-16):臨床像は,顔面に好発する,境界明瞭な黒褐色~皮膚色の半球状結節.ダーモスコピー像は,globular patternのことが多い.組織像は,真皮網状層で楔状の病変を形成する.母斑細胞の増加が隆起部の真皮網状層と網状層下層まで分布するのが特徴.顔にあって目立つので,Miescher母斑の位置は個人の特定に役立つ.Miescherは,スイスの病理医の名前である.②Unna母斑(図21-17):臨床像は,体幹や頸部に好発する,有茎性の乳頭腫状の軟らかい腫瘤.皮膚色から淡褐色のため,軟性線維腫や神経線維腫と臨床診断されることがある.大きさは6mm程度までである.組織像は,乳頭腫状の構築をとる.母斑細胞の増加が隆起部内の真皮乳頭層と,その下方の付属器周囲に限局しているのが特徴で,「キノコ状」の外観を呈する.Unna母斑というと,一般的には項部に生じた単純性血管腫を指すので注意が必要.Unnaは,ドイツの皮膚科医の名前である.③Clark母斑(図21-18):臨床像は,体幹や四肢や足底に好発する黒褐色斑で,隆起しない.ダーモスコピー像は,pigment networkを呈する.組織像

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