病態
Bowen病は表皮内の有棘細胞癌の1つである.通常高齢者に生じる紅褐色局面である.Bowen病は上皮内癌であるが5%程度で浸潤癌(Bowen癌)に進行する.亀頭部のBowen病はQueyrat紅色肥厚症とよばれる.
爪部のBowen病では粘膜悪性型ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)が検出されることが多く(PCRで約半数),性感染症の可能性も考慮する.筆者らの検討によると,爪部Bowen病は爪周囲型(図22-18)図と爪甲色素線条/爪下型(図22-19)図に分類される.特に爪甲色素線条/爪下型Bowen病は悪性黒色腫との鑑別が重要となるが,ダーモスコピーで過角化による爪甲の変形・肥厚,爪甲下の角質増殖がみられ鑑別に役立つ.HPV関連のBowen病は病理組織学的に粗大なケラトヒアリン顆粒や顆粒層付近の空胞細胞などのHPV感染所見がみられることが特徴的である.
【病因・発症機序】紫外線曝露や多発する場合は砒素や遺伝性疾患との関連も指摘される.外陰部と手指(特に爪部Bowen病)ではHPV感染がみられる.
診断
【鑑別診断】慢性湿疹や尋常性乾癬,脂漏性角化症,日光角化症などと鑑別する.爪に生じた場合は悪性黒色腫との鑑別が重要である.ダーモスコピーでは,表面の鱗屑や不規則に分布する糸球体様血管などがみられる.最終的には皮膚生検で診断確定する.
【問診で聞くべきこと】多発例では家族内同症と砒素の摂取について問診する.
【臨床症状からの診断】鱗屑あるいは角化を伴う体幹四肢の紅褐色局面(図22-20)図.種々の程度に色素異常,色素脱失を伴う.まれに多発することがある.
【必要な検査とその所見】皮膚生検が重要.
【病理組織学的検査】角質増殖,錯角化,表皮全層の異型角化細胞の増殖,クランピング細胞,dyskeratotic cellsあり(図22-21)図.
治療
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