診療支援
治療

有棘細胞癌
Squamous cell carcinoma:SCC
梅林 芳弘
(東京医科大学八王子医療センター教授)

病態

 重層扁平上皮に分化する悪性腫瘍を,発生臓器を問わず一般に「扁平上皮癌」という.そのなかで,皮膚の重層扁平上皮すなわち表皮ケラチノサイトに分化する悪性腫瘍を,本邦皮膚科では特に「有棘細胞癌」とよんでいる.英語では,皮膚の扁平上皮癌(有棘細胞癌)も他臓器のそれと区別することなく「squamous cell carcinoma」と表記する.「扁平上皮癌」「有棘細胞癌」「squamous cell carcinoma」,いずれも略称は「SCC」である.

 有棘細胞癌の「棘」とは,表皮有棘細胞のもつ「棘」,すなわち細胞間橋のことである.有棘細胞癌は,有棘細胞(ケラチノサイト)への分化の特徴として,細胞間橋の形成,角化,シート状の増殖パターン,ケラチンの発現を示す.

【頻度】上皮内扁平上皮癌(SCC in situ)である日光角化症とBowen病を含めれば,皮膚悪性腫瘍のうち最も多い.SCC in situを除けば最多は基底細胞癌であり,SCCはそれに次ぐ.

【病因・発症機序】SCCの発生母地は,本邦では1980年代半ばまで熱傷瘢痕が最多であったが,その後は日光角化症が最も多く経年的に増加している.現在,SCCの発癌誘因として最も重要なものは,日光紫外線である.紫外線は直接DNAを損傷することでケラチノサイトの癌化に関与している.熱傷瘢痕などの慢性炎症の場合は,継続して産生・遊離される活性酸素や,増殖因子を含めたサイトカインなどがケラチノサイトの癌化と進展を促進するものと考えられている.その他の発癌要因として,放射線,砒素などの化学物質,温熱刺激,宿主の免疫抑制,色素性乾皮症などの先天性疾患が挙げられている.

【臨床症状】SCCの基本的臨床像は,表面に多少とも角化を伴う紅色調の硬い結節・腫瘤である.しばしば表面に痂皮を伴い,乳頭状・カリフラワー状を呈する.増大速度の大きい腫瘍は中

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