診療支援
治療

神経鞘腫(Schwann細胞腫)
Neurilemmoma(Schwannoma)
田村 敦志
(伊勢崎市民病院医療副部長)

病態

 神経鞘腫は末梢神経の構成細胞であるSchwann細胞由来と考えられる境界明瞭で被包化された緩徐に増大する良性腫瘍である.脳神経や脊髄神経などの末梢神経内に発生するが,脳神経では頭蓋内,脊髄神経では脊柱管内にしばしば生じる.皮膚科領域で遭遇するものは多くは皮下結節を呈するが,皮内に生じる場合もある.


診断

【臨床症状】20~50歳に好発し,性差や人種差は明確ではない.頭部,四肢屈側,体幹の順に多く,通常単発で弾性硬の皮下結節を呈する.自覚症状を欠く場合と圧痛や放散痛を伴う場合とがある.触診では神経の走行に沿う方向に長軸を有する卵形を呈し,この方向には可動性が乏しいが,神経と直交する方向には可動性を有することが多い.多発例はまれであるが,神経線維腫症1型(NF1,von Recklinghausen病),2型(NF2),(家族性)神経鞘腫症(SMARCB1の変異)においてみられる.

【鑑別診断】弾性硬の皮下あるいは皮内結節を呈する腫瘍が鑑別となり,圧痛を有する血管平滑筋腫,Glomus腫瘍,エクリン螺旋腺腫などが鑑別として重要である.また,まれな病型である叢状神経鞘腫は叢状神経線維腫に似る.

【病理組織学的所見】線維性被膜を有する境界明瞭な腫瘍で,腫瘍細胞は紡錘形から卵円形の核をもつ紡錘形細胞からなる.腫瘍細胞が密に束状に交錯しながら増殖するAntoni A領域と,浮腫状,粘液腫状の間質内に腫瘍細胞が散在するAntoni B領域が種々の割合で混在する(図23-1).Antoni A領域には柵状配列した核に好酸性に濃染する細胞質が囲まれたVerocay bodyとよばれる所見がみられる.免疫組織学的に大部分の腫瘍細胞はS-100蛋白とSOX10に強陽性を示す.


治療

 神経鞘腫の悪性化はきわめてまれであるが,起原となった神経の圧迫症状がみられる場合には外科的切除が行われる.皮下で支配

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