診療支援
治療

腱鞘巨細胞腫
Giant cell tumor of the tendon sheath
帆足 俊彦
(日本医科大学准教授)

病態

 2013年のWHO分類で腱鞘巨細胞腫と色素性絨毛結節性滑膜炎はまとめて,腱滑膜巨細胞腫瘍と定義された.腱滑膜巨細胞腫瘍の局在型を腱鞘巨細胞腫とよぶ.腱鞘から発生する良性の線維組織球腫瘍である.本邦では30~50歳代に多く,女性に多い.約85%が手指の腱,腱鞘や関節と隣接部分に発生する.


診断

【臨床症状からの診断】手指,特に示指,中指の関節近傍に好発する,下床との可動性が不良な1~3cm程度の単発性の硬い皮下結節である.圧痛はないことが多い.

【画像所見】境界明瞭な結節として描出される.X線では骨侵食像や圧排像がみられることがある.MRIでは腱鞘を取り囲む,ないし接して存在することが多い.T1強調画像で低信号となる.T2強調画像では低~高信号が混在する.腫瘍内のヘモジデリン沈着や豊富な膠原線維はT2強調画像での低信号を反映する.Gdにより不規則に造影される.超音波では非特異的な低エコーとして描出される.

【病理組織学的検査】線維性の被膜で包まれた,境界明瞭な分葉状の腫瘍塊である.組織球様細胞からなり,破骨細胞型の多核巨細胞,ヘモジデリン含有細胞,泡沫細胞を混じる.


治療

 治療は外科的切除である.関節,腱組織,血管,神経を温存しつつ切除するために,無血野を確保した状態で行うことが勧められる.再発率は9~44%と高い.再発率が高いために,周囲組織の合併切除を含めた徹底した腫瘍切除と再建をすべきとする考えがある.一方,良性腫瘍であるために,審美面と機能温存に注意し,癒着組織については最小限の合併切除を行って完全切除を目指すという考えがある.筆者は後者のできるだけ侵襲の少ない手術を好んで行っている.DIP関節周囲例,骨侵食像の存在例,変形性関節症の合併例は再発率が上がるとされているので注意する.

□患者説明のポイント 外科的治療に際して,良性腫瘍ではあるが,再発率が高いことを説明する.よ

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