診療支援
治療

血管肉腫
Angiosarcoma
藤澤 康弘
(筑波大学准教授)

病態

 血管肉腫は肉腫全体の1~2%にすぎない非常にまれな腫瘍である.血管肉腫全体の約半数が皮膚に生じ,そのほとんどが頭頸部である.診断時に遠隔転移がない症例でもその50%生存期間は20か月未満と非常に予後不良で,多くが肺転移により死亡する.血管肉腫は血管由来かリンパ管由来かについてはこれまでにさまざまな検討がなされてきたが,リンパ浮腫を背景に発症した症例にリンパ管内皮マーカーが陽性となる症例が少ない反面,リンパ浮腫のない症例の半数にリンパ管内皮マーカーが陽性となるなど,その由来に関しては現在までに結論は出ていない.よって,本項では血管由来かリンパ管由来かを問わず「血管肉腫」として扱う.

【分類】皮膚に生じる血管肉腫は以下の3つに分類される.なお,組織学的な違いはない.①皮膚血管肉腫:高齢者の頭頸部に発生する血管肉腫で,最も頻度が高い.約3割の症例で発症前に外傷の既往があるとされるが,その関連は不明である.②リンパ浮腫続発血管肉腫(Stewart-Treves症候群):乳癌根治術後のリンパ浮腫に続発する血管肉腫として報告されたのが始まりであるが,リンパ浮腫の原因は問わない.リンパ浮腫から10年以上の年月を経て発症する.③放射線照射後血管肉腫:放射線照射に伴い発症する血管肉腫で,リンパ浮腫続発血管肉腫と同様,放射線照射から10年以上の年月を経て発症する.


診断

【臨床所見】高齢者の頭頸部に出現した拡大傾向のある紫斑で,結節・潰瘍・血痂を伴うような典型的な臨床像であれば臨床的な診断も可能である(図24-25a)しかし,全く紫斑を伴わず常色の結節として生じるような症例では臨床的に血管肉腫を疑うことは難しい(図24-25b)なお,全体の3割ほどに外傷の既往があるとされるが,発症との関連は不明である.病変は広範囲に広がっていることが多いため,被髪頭部では剃毛して病変の広がりを正

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