診療支援
治療

未分化多形肉腫/悪性線維性組織球腫
Undifferentiated pleomorphic sarcoma:UPS/Malignant fibrous histiocytoma:MFH
伊東 孝通
(九州大学講師)

病態

 悪性線維性組織球腫(MFH)は1964年に軟部肉腫の1疾患群として報告された.HE染色では多形性に富む細胞が増殖しており,その形態学的特徴から当初は線維組織球または線維芽細胞に起源をもつ腫瘍であろうとされた.かつてMFHは軟部肉腫のなかでは最も頻度の高い腫瘍だったが,その後の免疫組織学的染色や分子遺伝学的解析などの発達により,形態学的にMFHと診断されていたもののなかに別の分化傾向や起源をもつものが特定され,それらの腫瘍がMFHから除外されていった.現在では明らかな分化や起源が特定できないもののみを未分化多形肉腫(UPS)という名称に置き換えてよんでいる.なお,MFHの起源に関してはこれまでの研究で組織球由来を示唆する証拠はない.

 MFHの疾患概念が見直されていくなかで,2002年のWHO分類ではMFHはUPSと併記され同義語とされたが,2013年のWHO分類ではMFHという単語は消失した.新たにundifferentiated/unclassified sarcomaという大項目が作られ,UPSはそのなかの1亜型として組み入れられている.

 MFHやUPSの概念は時代とともに変遷してきた.近年では腫瘍を遺伝子的な観点から再分類する試みが行われており,特に軟部肉腫の分野では進んでいる.今後の診断技術の発展により現行のUPSも概念や名称が変更になる可能性がある.


診断

 UPSの腫瘍細胞は多形で,組織球様細胞や線維芽細胞様細胞,多核巨細胞,泡沫細胞などがみられる.核異型は高度で核分裂像が目立つ.紡錘形細胞は花むしろ状に配列する傾向がある.確定診断には種々の免疫染色などを行い特定の分化・起源をもつ腫瘍ではないことを証明する必要があり,除外診断となる.

 通常,UPSは悪性度が高く予後不良だが,なかには進行の遅いものも混在する.特に深部に生じたUPSは進行が早く,皮膚に限局するUP

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