病態
Rickettsia japonicaを病原体とするリケッチア感染症で,4類感染症である.マダニ類が媒介し,主に本州中部以西にみられる.病原体を保有したマダニに刺されて2~8日で出現する高熱,体幹・四肢の発疹と刺し口を特徴とする.
【頻度】2016年以降は年間約300例前後が報告されている.主に関東以西の西日本で,山間部を中心に局地的に報告されており,特に三重,和歌山,兵庫,広島,宮崎,鹿児島などで多い.マダニが活動する4~11月,特に夏から秋にかけて患者が発生する
【病因・発症機序】病原体を保有するヤマアラシチマダニ,キチマダニ,フタトゲチマダニなどが媒介すると考えられ,マダニが吸着した部位からリケッチアが感染して増殖し,発熱や皮疹,肝機能障害などを生じる.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】臨床的にはつつが虫病に類似するが好発季節が異なる.そのほか,ウイルス性発疹症や薬疹などを鑑別する必要がある.
【問診で聞くべきこと】発症の2~8日前に山間部や畑など,媒介者となるマダニ類の生息する場所での野外活動があったかどうかを確認する.
【臨床症状】①39~40℃の高熱と全身倦怠感,頭痛,関節痛,筋肉痛などを伴う.表在リンパ節腫脹は目立たない.体幹,四肢には自覚症状のない直径5mm前後の境界不鮮明な淡い紅斑,ないし丘疹が播種状に認められる(図26-17)図.発疹は四肢に多く,手掌や足底にも認められる.重症例では胃腸障害,神経障害などを合併する.②マダニの吸着部には「刺し口」とよばれる痂皮を伴う紅色丘疹ないし紅斑がみられ(図26-18)図,被覆部に認められることが多い.この刺し口の皮疹部にはマダニ虫体は認めない.
【必要な検査】①臨床検査では白血球数はほぼ正常で血小板は減少し,重症例では播種性血管内凝固症候群(DIC:disseminated intravascular coagulat
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