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細菌性皮膚疾患 最近の動向
石井 則久
(国立療養所多磨全生園名誉園長)

1.原因菌に関する動向

 細菌感染症で新たな菌による皮膚感染症の情報はない.しかし,市中感染型MRSA(CA-MRSA:community-associated MRSA)は皮膚科医を悩ませており,治りにくい癤や癰などではCA-MRSAを念頭におく必要がある.院内感染型MRSAが多剤耐性に対し,CA-MRSAはβラクタム系薬のみに耐性を示す株が多い(ただし,近年,多剤耐性化を獲得したCA-MRSAの出現も報告されている).

 溶血性レンサ球菌ではA群のほかにB群やG群も多く検出されているが,群の違いによる臨床症状の差は現時点では明確でない.

2.検査に関する動向

 質量分析法が一般検査機関や大病院などで導入されてきた.すなわち,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS:matrix-associated laser desorption/ionization-time of flight mass spectrometry)などの質量分析法で,多くの場合は培養成功例で菌の同定を行うが,その後は短時間で結果が出る.

 MALDI-TOF MSの普及で,抗酸菌症の検査で用いられてきたDNA-DNA hybridization(DDH)法は実施されなくなってきた.

 起炎菌の薬剤感受性試験は必須であり,さらに薬剤耐性遺伝子の検出やCA-MRSA同定の迅速化なども研究室レベルで進行している.

3.患者情報

 生活環境(抗酸菌症,小児の感染症など),全身状態(肝機能,糖尿病など),生活行動(職業,登山,趣味,海外出身など)の問診で診断に近づく(表27-1)

 海外渡航歴(海外での感染機会)の問診も忘れずに行う.また海外出身者ではHansen病や皮膚結核,熱帯皮膚病なども鑑別に入れる.

 免疫不全状態,全身衰弱,糖尿病などは細菌の感染・発病を容易にする.易感染

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