病態
尋常性膿瘡は別名深膿痂疹ともいわれるように,真皮深層まで達する病変を呈し,特有の深い打ち抜き潰瘍を形成する.起炎菌はA群レンサ球菌によるものが多い.しばしば瘙痒性皮膚疾患の搔破に続発する.
壊疽性膿瘡は中心に壊疽を伴う重症型で,免疫低下状態にある患者の緑膿菌敗血症に伴う敗血疹の1つとして知られる.
【病因・発症機序】①尋常性膿瘡はA群レンサ球菌によるもののほか,黄色ブドウ球菌との混合感染や黄色ブドウ球菌単独のものがある.組織学的には表皮から真皮に至る壊死と,真皮内に血管拡張と著明な好中球浸潤を認め,リンパ球,組織球が混在する.治癒期には組織球が増加し,線維化がみられる.②壊疽性膿瘡は緑膿菌敗血症の1~6%にみられ,デルマドロームとして重要である.組織学的には血管壁(中膜,外膜)への菌の直接的浸潤による壊死性血管炎の像を呈し,真皮から皮下組織に炎症細胞浸潤と血管の増生が観察される.緑膿菌由来のエラスターゼが血管壁の傷害に,プロテアーゼ,エンドトキシン(endotoxin)Aが組織破壊と潰瘍形成に関与していると考えられる.
【臨床症状】①尋常性膿瘡は下肢,臀部などに紅暈を伴った水疱または膿疱で始まり,これが拡大するとともに中心部に硬結を生じ,すみやかに壊死に陥り,厚い痂皮を形成する.痂皮は卵円形ないし不整形で,時に顆粒状に隆起し,辺縁が鋭利で,周囲に紅暈を伴う.痂皮下には膿汁を認め,打ち抜き器で皮膚を打ち抜いたような特有の潰瘍を形成する(図27-3)図.②壊疽性膿瘡の病変は疼痛を欠く紅斑で始まり,これが拡大隆起して出血性の水疱を生じ,破れて黒色の壊死物質が形成され,周囲には紅斑を伴う壊疽性の潰瘍となる.病変はどこにでも起きうるが,外陰部,臀部,四肢,腹部,腋窩に好発し,まれに顔面に生じる.敗血症に伴う場合は,発熱などの全身症状をみる.
【必要な検査とその所見】①細菌培養検査,薬
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