病態
紅色陰癬,黄菌毛,蚕食性角質融解症の3疾患は,皮膚常在菌であるCorynebacterium属による表在性皮膚細菌感染症である.これらは,白癬など表在性皮膚真菌症との鑑別疾患として認知すべきである.原因菌は,蛍光ジフテロイドでありWood灯検査にて患部に特有な蛍光が確認できる.
Ⅰ 紅色陰癬(エリトラスマ)
(図27-22)図
【臨床症状】鼠径部,趾間,乳房下など間擦部の境界明瞭な赤褐色斑で,鱗屑は乏しく中心治癒傾向はなく,痒みなど自覚症状は少ない.局所の多汗,肥満や糖尿病などの背景因子を有する成人にみられる.患部皮膚が持続的に密着する部位は難治であり,白癬を合併する場合もある.
診断
Wood灯検査(365nmUVA)により局所にサンゴ紅色の蛍光を認め診断する.診断補助として鱗屑のグラム染色や,白癬との鑑別にはKOH直接鏡検法を行う.
治療
治療は,外用抗菌薬を使用するが,イミダゾール系外用抗真菌薬は抗細菌作用もあるとされ有効な場合がある.広範もしくは難治な病変に対してマクロライド系抗菌薬の約2週間内服を行う.
Px処方例 1)~3)のいずれかを症状に合わせて用いる.
1)フシジンレオ薬軟膏 1日1~2回 単純塗擦 約2週間
2)ニゾラール薬クリーム 1日1回 単純塗擦
3)クラリス薬錠(200mg) 1回1錠 1日2回 約14日間 併用薬に注意
□生活指導のポイント 清潔と乾燥とともに,間擦部皮膚の密着を緩和する衣類を使用させる.
Ⅱ 黄菌毛
(図27-23)図
【臨床症状】腋毛や陰毛の毛幹に鞘状もしくは数珠状に黄白色の固化した糊状物が付着する.青年に好発し自覚症状はない.自然治癒する場合がある.
診断
特徴的な臨床像を視診により診断するが,補助的にWood灯検査にて毛幹の付着物の青白色蛍光を確認する.
治療
筆者の経験では黄菌毛の鞘状の付着物は水溶性の洗浄剤では遊離せず,油脂や軟膏基剤の塗擦
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