診療支援
治療

放線菌症
Actinomycosis
北見 由季
(昭和大学客員教授)

病態

 放線菌症はグラム陽性嫌気性桿菌であるActinomyces属による感染症である.Actinomyces属は主に口腔内の常在菌として存在するが,上気道,腸管内,泌尿生殖器にも存在する.放線菌症を起こす代表的な菌種はActinomyces israeliiである.

【病因・発症機序】放線菌症は頰部,顎部,頸部に発症することが多い.発症機序としては齲歯や歯垢,抜歯,口腔内小外傷から菌が侵入,嫌気性下に増殖して硬結や膿瘍を形成する.臨床症状からは急性型と慢性型に分けられる.急性型は疼痛,発熱,頸部リンパ節腫脹などを伴い,急速に増大して膿瘍を形成する.一方慢性型は徐々に腫脹し,瘻孔形成や板状硬結を呈する.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】癤や癰,感染性粉瘤などの細菌感染症,発症部位によっては外歯瘻との鑑別を要する場合もある.また他の感染症として,皮膚ノカルジア症,皮膚腺病,皮膚非結核性抗酸菌症,深在性皮膚真菌症も鑑別に挙げられる.

【問診で聞くべきこと】齲歯や抜歯などの歯科治療の有無,また抗菌薬内服などの治療歴を聞く.

【臨床症状からの診断】発赤,浸潤性硬結から板状硬結を呈する.次第に軟化して膿瘍を形成,一部瘻孔を生じると排膿がみられる.膿からケシ粒大の顆粒(druse,grain,granule)の排出がみられることがある.顎部の炎症が広範囲に及ぶと開口障害を生じる.しかし,こうした臨床症状だけでは他の感染性皮膚疾患との鑑別は非常に難しいため,本症も念頭におきつつ各種検査を進めていく.

【必要な検査とその所見】培養など菌学的検査だけでは菌が検出されずに診断ができない場合もあるため,病理組織学的検査も同時に行う必要がある.

1.菌学的所見

 膿から顆粒が得られれば,潰してグラム染色を行うと放射状に分岐したグラム陽性桿菌として確認できる.

 膿,滲出液を検体として培養検査を行う場合は,BHI

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