病態
クリプトコックス症はCryptococcus neoformans(C.neoformans)またはC.gattiiにより起こる深在性真菌症である.C.neoformansは全世界に分布し,ハトなど鳥類の堆積糞から分離される.C.gattiiは熱帯地域とオーストラリアでみられ,主に腐朽木材が感染源とされている.
皮膚クリプトコックス症は,皮膚限局性クリプトコックス症と播種性クリプトコックス症の皮膚病変に分類される.皮膚限局性は外傷が契機となり,経表皮的に感染し皮膚症状を生じる.一方,播種性はまず経気道的感染により肺に原発巣を生じ,血行性に皮膚や中枢神経に続発性に病変を生じる.
【頻度】皮膚限局性はまれな疾患で,1968~2018年の間に65例の本邦報告例がある.播種性の皮膚病変は全クリプトコックス症の5~15%の頻度で生じている.
診断
【問診で聞くべきこと】免疫不全を伴う基礎疾患や外傷の有無,ハトとの接触歴などを確認する.
【臨床症状からの診断】皮膚限局性では顔面や四肢など外傷を受けやすい部位に好発する.臨床像は潰瘍,丘疹,結節,腫瘤,皮下結節,硬結,蜂窩織炎,浸潤性紅斑など非常に多彩である.臨床像のみでの鑑別は困難だが,難治性の皮膚潰瘍(図28-26)図,抗菌薬が無効な結節を認めた場合は本症も疑う.播種性の皮膚病変は頭頸部に好発する.前述の臨床像のほか,軟属腫様丘疹,痤瘡様丘疹の出現も本症を疑う.
【必要な検査とその所見】①真菌学的検査:滲出液,膿,生検組織の塗抹標本の墨汁法を行うと莢膜を伴った菌要素が認められる.同時に真菌培養を行うとクリーム状酵母様集落が得られる.②病理組織学的検査:HE染色像で真皮に明るい空隙をもった菌要素の集簇が確認できる.PAS染色,Grocott染色,ムチカルミン染色を行うとさらに菌要素が明瞭に認められる.③その他の必要な検査:皮膚限局性であって
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