病態
皮膚Scedosporium症は土壌や水圏環境の腐朽植物に広く分布するScedosporium属真菌による皮膚,皮下組織の感染症である.この菌のコロニーは暗色であるため,黒色真菌症に分類されることもある.皮膚科領域では多くはS. apiospermumに起因するが,この菌は以前はPseudallescheria(Petriellidium)boydiiとしても報告されていた.外傷を契機に菌が持ち込まれて発症するため,四肢,特に手が好発部位である(図28-27)図.ほとんどの患者は基礎疾患をもち,免疫抑制状態にあると考えられる.本症の報告例は,近年増加傾向にある.Scedosporium属真菌は,皮膚以外では肺感染症(津波肺),角膜真菌症,人工弁置換術後の心内膜,副鼻腔炎の原因菌としても知られている.
診断
【問診で聞くべきこと】経過や外傷の既往,基礎疾患があれば治療歴,治療薬を聞き,免疫抑制状態にあるかを判断する.
【臨床症状からの診断】①亜急性の経過で結節,膿瘍,囊腫が生じた際は,本症をはじめ深在性皮膚真菌症を疑う.屋外での小外傷のあとに発症する例が多いが,外傷の既往が明らかでない例も多い.②熱感,炎症所見,自覚症状は細菌によるものより軽微であるが,痛みを伴うことが多い.③自壊・排膿することがある.膿汁の直接鏡検,生検標本中に菌要素がみられ,真菌培養で真菌が容易に培養される.
【必要な検査とその所見】①KOH直接鏡検法:病巣表面に付着する鱗屑,膿瘍,囊腫からの膿汁を鏡検する.隔壁を有する菌糸を認める(図28-28a)図.②真菌培養:検体をサブロー培地や血液寒天培地の斜面,あるいは平板に接種すると,当初は白色,やがて灰色~褐色を示す絨毛状の菌がすみやかに発育し,培地を覆う(図28-28b)図.環境にも普遍的に分布するので,同じ菌種が繰り返し培養されることを確認する.③皮膚生検
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