病態
毛包虫によって生じる皮膚症状は多彩で,本邦では安藤仁平が皮膚毛包虫症(demodicidosis)を詳細に検討し,痤瘡型,酒皶鼻型,以上の混合型,毛瘡型,湿疹型,眼瞼炎型,疥癬型,水疱型,膿痂疹型の9型に分類している.そのなかで痤瘡型が90%を占めていることから,本型を毛包虫性痤瘡(acne demodecica)と呼称した.現在においては,慣習的によばれている「毛包虫」の正式な学名は「ニキビダニ」であることから,「毛包虫性痤瘡」より,「ニキビダニ痤瘡」が病名として適切であるかもしれない.
毛包虫は,正常皮膚においても皮脂腺に富む顔面,特に鼻唇溝,頤部などの毛包に多く常在している.毛包虫性痤瘡は,この毛包虫が過剰に増加することにより毛包炎が誘発され,発症すると考えられている.長期のステロイド投与(内服・外用),タクロリムス外用薬の投与などが誘因となることがある.
【臨床症状】発症は中年以降に多く,女性に多いという報告や,性差はないという報告もある.顔面,特に鼻を中心とした部位に好発し,痤瘡様症状を呈する.毛包一致性の紅暈を伴う丘疹や膿疱などが散在性に生ずる.時に軽度の痒みや灼熱感を認めることがある.
診断
尋常性痤瘡など,痤瘡(→,「痤瘡様発疹」の項,表31-1図参照)に含まれる疾患との鑑別が必要となる.毛包虫は正常皮膚にも常在するため,膿疱の内容物や鱗屑をKOH溶液にて直接検鏡し,多数(5匹/cm2以上)の毛包虫を確認できれば本疾患の可能性がある.
治療
a.外用療法
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
1)イオウ・カンフルローション薬 1日数回 洗顔後 患部に塗布
2)オイラックス薬クリーム(10%) 1日数回 洗顔後 患部に塗布
b.薬物療法
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
1)ミノマイシン薬錠(50mg) 1回1錠 1日2回 朝・夕食後 [保外]
2)フラジール薬内服錠(2
関連リンク
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