診療支援
治療

Fox-Fordyce病
Fox-Fordyce disease
室田 浩之
(長崎大学教授)

病態

 アポクリン汗腺の汗管の漏斗部が角化によって閉塞することで生じると考えられている.

【頻度】欧米人の特に思春期以降の女性に多い.東洋人にはまれである.

【病因・発症機序】病因はいまだ不明だが,思春期前女性,閉経後女性,男性では報告がほとんどないため,アポクリン汗腺分泌にかかわると考えられる.レーザー脱毛療法後に生じたとする症例報告も散見する.

【臨床症状】腋窩,乳暈,陰部に好発する.瘙痒に始まり,搔破に伴い常色から褐色の半ドーム状に隆起する毛包一致性の丘疹が混ざる苔癬化局面を形成する.多くは慢性の経過をとる.


診断

 病変の特徴的な局在,臨床症状,出現時の状況から診断できる.

【鑑別診断で想起すべき疾患】湿疹,感染症(例:毛囊炎),Darier病,Hailey-Hailey病などとの鑑別を要する.

【問診で聞くべきこと】月経の有無,これまでの治療歴(脱毛治療レーザー施術の有無)などが参考になる.

【臨床症状からの診断】腋窩,乳暈,陰部などの好発部位に強い痒みのある場合に本疾患を鑑別とし,診察する.

【必要な検査とその所見】適宜,皮膚生検による病理学的検査,細菌・真菌の培養または鏡検を行う.組織学的特徴として毛孔,アポクリン汗管の閉塞像と炎症細胞浸潤を認める.


治療

 治療反応性に乏しく,確立された薬物療法,理学療法はない.局所的ステロイド外用は有効なことがある.タクロリムス軟膏(保険適用外)の有効例に関する限定的な症例報告もある.状況に応じて紫外線治療も適用される.難治かつ生活に支障を及ぼす例では病変部を含む皮膚の外科的切除が検討されることもある.

Px処方例 陰部以外は症状に応じて1),2)のいずれかを用いる.1)のステロイドはストロンゲスト,2)はベリーストロングである.陰部は外用薬の経皮吸収率が高いため,3)のストロングを基準とし,症状や経過に応じて適宜変更,中止する.

1)デルモベート

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