診療支援
治療

酒皶,酒皶様皮膚炎
Rosacea,Rosacea-like dermatitis
山﨑 研志
(東北大学准教授)

病態

 酒皶は,頰部や鼻部,前額部の顔面中心部が赤くなる,いわゆる「赤ら顔」を特徴とした疾患である.顔の火照りや赤みが強くなることで,不快感を訴える.酒皶病態には,遺伝的背景(遺伝子多型)や,皮膚自然免疫受容体TLR(Toll様受容体)を介した細胞内シグナル伝達の亢進,肥満細胞を介した表皮自然免疫反応と神経因性反応の連携が分子病態として確認されているが,発症機序の全貌は不明である.酒皶様皮膚炎では,ステロイド薬の外用・内服療法やカルシニューリン阻害外用薬〔タクロリムス外用薬(プロトピック)やpimecrolimus外用薬〕により酒皶に類似した症状を呈する.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】顔面に紅斑やニキビ様皮疹を呈する疾患が鑑別疾患に相当する.顔面に紅斑やニキビ様皮疹を呈する疾患には,接触皮膚炎,空気曝露性接触皮膚炎(花粉症,花粉皮膚炎を含む),光線過敏症,脂漏性皮膚炎,尋常性痤瘡などの痤瘡疾患,毛包虫性皮膚炎,好酸球性膿疱性毛包炎,顔面播種状粟粒性狼瘡などがある.全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎などの膠原病による蝶形紅斑も鑑別疾患となる.

【問診で聞くべきこと】①医薬品の確認:ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬の使用歴を確認し,これらによる酒皶増悪や酒皶様皮膚炎誘発の可能性を確認する.ヘパリン類似物質の顔面への長期使用や多用による毛細血管拡張症にも留意する.②合併症・既往歴の確認:アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎などの湿疹皮膚炎群,全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎などの膠原病,その他のニキビ様皮疹を呈する全身性疾患の合併の有無を検討する.③環境因子の影響:寒暖差,日光・紫外線曝露などの外界環境の変化による症状の変化を確認する.季節性の症状消長を確認し,花粉症・花粉皮膚炎合併の有無などを推定する.④生活環境の影響:アルコール摂取,香辛料の効いた刺激物,コーヒーなど飲料・食品によ

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