診療支援
治療

円形脱毛症
Alopecia areata
大日 輝記
(香川大学教授)

病態

 類円形の脱毛巣を頭部に,または全頭,全身の脱毛を誘因なく後天性に生じる疾患である.瘢痕を伴わない.生命を直接脅かすことはなく,身体的苦痛や機能障害,後遺症もない,皮膚科らしい「姿」の疾患である.姿はアイデンティティであり社会との接点である.これらを損なうことで患者は強い不安や恐怖,抑うつに襲われる.

【頻度】本邦の皮膚科受診患者の2.45%を占める.生涯罹患率は2.1%,すべての年齢層に発症し初発の中央値が31歳,女性が51%で性差はないが女性の受診が多い.

【病因・発症機序】臓器特異的自己免疫疾患と考えられている.CD8陽性NKG2D陽性リンパ球の浸潤が毛球部にみられる.

【特に注意すべき臨床症状】約1割に抑うつ状態を合併する.不眠などの問診や表情の観察で抑うつ状態と考えたら,脱毛の重症度や病期にかかわらず,精神科医による診察,治療介入を早期に検討する.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】脱毛を生じる疾患は多い.治療には診断の確定が必須であり,診断を確定せず漫然と治療介入すべきでない.①瘢痕性脱毛:皮膚エリテマトーデスや皮膚筋炎,限局性強皮症(morphea),毛孔性扁平苔癬,禿髪性毛包炎などの慢性膿皮症も類似の限局性脱毛を生じ,永久脱毛に至りうる.②トリコチロマニア(抜毛癖):類似の限局性脱毛,黒点を生じる.合併例では鑑別が難しい.③休止期性脱毛(telogen effluvium):心身の強いストレスや起因薬開始の2~3か月後に発症する.急速進行性びまん性脱毛と鑑別を要する.④男性型脱毛(androgenetic alopecia),女性型脱毛(female pattern hair loss):左右対称性に生じる.合併例では慎重な見極めを要する.⑤感染症による脱毛:頭部白癬や梅毒を含む.臨床像のみでは鑑別が困難な場合がある.

【問診で聞くべきこと】いつ発症したか,初発か再

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