診療支援
治療

陥入爪
Ingrown nail
齋藤 昌孝
(慶應義塾大学専任講師)

病態

【病因・発症機序】陥入爪は,爪甲の側縁の一部が皮膚に陥入(刺入)し損傷された皮膚が炎症をきたす疾患であり,母趾に生じることが圧倒的に多い.深爪や爪欠けがきっかけとなり,爪甲側縁に鋭いとげのようなもの(爪棘)が形成され,それが側爪郭とよばれる爪甲側縁に接する部分の皮膚に刺さることで発症することが多く,サイズが合わない靴を履いたり,激しい運動をしたりするなど,爪甲側縁の皮膚への強い圧迫が繰り返されることが悪化因子となる.また,特に若年者で,爪甲が薄く扁平でかつ発汗によって側爪郭の皮膚が浸軟している場合には,皮膚が損傷を受けやすく陥入爪になるリスクが高い.

【臨床症状】陥入爪を発症すると,歩行や運動時はもちろんのこと,患部に何かが軽く触れただけでも激痛が生じることから,日常生活に支障をきたしQOLが著しく低下する.そして,爪甲が皮膚に陥入したままの状態が長く続くと,炎症の遷延化による皮膚の線維化で側爪郭が硬く肥厚してしまい,治りにくくなるだけでなく再発しやすくなる.陥入爪では発症早期に即効性のある治療を行うことが重要となる.


診断

 「巻き爪による痛み」を主訴に来院する患者の爪を診察してみると,爪甲の彎曲は過度とはいえず,医学的には陥入爪であるケースをしばしば経験する.巻き爪だから陥入しやすいということはなく,巻き爪であろうとなかろうと,何らかのきっかけで陥入爪を発症するケースが多い.深爪をしたり,爪を無理やり引きちぎったり,爪の角が欠けたりすると,爪甲側縁に爪棘が形成され,それが皮膚に鋭く刺さることが陥入爪の原因として多いことから,そういった経緯がなかったかを確認することも大切である.

 陥入爪では,爪棘や爪甲側縁が皮膚に刺さり,損傷された側爪郭の皮膚に炎症が生じて発赤と腫脹がみられるようになり,しばしば易出血性の肉芽の形成を伴う.触診で圧痛が特に強い部分や肉芽の直下では爪甲の陥入

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