病態
舌の病変は舌体の表面である舌背に生じる舌に固有の病変と,舌以外の口腔粘膜に生じる病変が舌に生じるもの(例:アフタ性口内炎,扁平苔癬など)に分けられる.本項では前者について解説する.舌背は表面に無数の小突起があり,これを舌乳頭という.非常に小さく尖った白っぽい糸状乳頭と,その間にピンク色の茸状乳頭がある.後述する疾患群では何らかの原因(全身状態,基礎疾患,薬剤,Candida属真菌の感染など)により,舌乳頭の伸長,萎縮,角化異常などの変化を伴い,特徴的な舌背の外観上の病変を呈することがあるが,原因不明な場合も少なくない.
【各疾患の病因・発症機序と診断】
1.地図状舌(geographic tongue)
1)病因・発症機序
ビタミン欠乏,内分泌障害,遺伝など諸説あるが原因は不明である.膿疱性乾癬,Reiter病などでも出現する.
2)診断
①問診・視診からの診断:白色から黄白色の縁取りを伴った円形ないし半円形の紅斑が多発し,癒合拡大して紅斑の部分が地図状の模様を形成する.この模様は日によって変化するのが特徴である.自覚症状はないが軽度の刺激感を訴えることがある.女性に多い.②必要な検査とその所見:通常不要だが,症状が強い場合,糸状菌検査を行う.
2.正中菱形舌炎(median rhomboid glossitis)
1)病因・発症機序
以前より胎生期の無対結節の縫合不全という説があったが疑問視されている.接触アレルギー,カンジダ症との関連などが示唆されているが詳細不明である.
2)診断
①問診・視診からの診断:中高年男性に多く,舌背正中後方で菱形や楕円形の僅かに陥凹する平滑な紅色の病変を認める.時に隆起する場合がある.自覚症状はない.②必要な検査とその所見:カンジダ症との関連が示唆されているため,糸状菌検査を施行する.また,病変に増殖性の変化がある場合,舌癌との鑑別のため,生検を行う.
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