診療支援
治療

表皮水疱症の遺伝相談
Genetic counseling for epidermolysis bullosa
森 志朋
(大阪大学寄附講座・再生誘導医学)

 表皮水疱症(EB)は出生時また出生直後から日常の軽微な外力により全身皮膚に水疱やびらんを生じる遺伝性水疱性皮膚難病の1つである.多くの病型で病因蛋白,病因遺伝子が解明され,遺伝子変異-表現型の相関や出生前診断が実用化されている.EBの遺伝相談においても家族歴の正確な聴取や家系図の作成,確実な病型診断が不可欠であり,可能な限り患者と両親の末梢血などのDNAより病因遺伝子変異を同定し確定診断する.妊娠早期の絨毛膜生検や羊水細胞から得られる胎児由来DNA検索により出生前遺伝子診断も可能である.

1.単純型表皮水疱症(EB simplex:EBS)

 EBSは表皮基底細胞に発現し細胞骨格を担うケラチン5またはケラチン14遺伝子,ケラチン線維を基底細胞膜底面に結合するプレクチンやBP230遺伝子異常で発症する.ケラチン5またはケラチン14遺伝子の片方のアレルに変異が同定されれば優性単純型で再発危険率は50%である.プレクチン遺伝子の両アレルに変異が同定されれば筋ジストロフィー合併型である.きわめてまれにケラチン14遺伝子やBP230遺伝子の両アレルに変異が同定される劣性単純型があり前者は重症で死に至ることがある.

2.接合部型表皮水疱症(junctional EB:JEB)

 ⅩⅦ型コラーゲン遺伝子の両アレルに変異が同定されれば中等症汎発型あるいは限局型で生命予後は良好である.ラミニンα3鎖,β3鎖,γ2鎖のいずれかの遺伝子で両アレルに変異が同定されれば重症汎発型であり生後1年以内に低栄養や敗血症で致死となることが多い.α6またはβ4インテグリン遺伝子の両アレルに変異が同定されれば幽門閉鎖症合併型で手術をしなければやはり致死となる.いずれも劣性遺伝形式で両親が保因者の場合,再発危険率は25%である.

3.栄養障害型表皮水疱症(dystrophic EB:DEB)

 臨床像として全身に広範囲水疱

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