診療支援
患者説明

重症心不全1)
寺井和生
(西新橋クリニック・副院長)

1.現在の病状・病態

 心不全とは,心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し,体が必要とする血液量を送ることができなくなり,日常生活において息切れやむくみが起こる状態であり,放置しておくと徐々に症状が悪化し,生命を縮める病気です.心不全の原因としては,虚血性心疾患(心筋梗塞など),高血圧症,弁膜症,心筋症,心筋炎,先天性心疾患,不整脈などがあります.その病因によらず,心ポンプ機能の低下により出現する自覚症状として,「うっ血(水分貯留)」症状と「心拍出量低下」症状があります.「うっ血」症状として,下肢の浮腫や肺うっ血による労作時呼吸困難などが出現し,また「心拍出量低下」症状として,全身倦怠感,低血圧,運動耐容能の低下などが出現します.心筋障害が進行すると「不整脈」が起こりやすくなり,その自覚症状として動悸やめまいなどがあります.さらに心機能が低下すると,心内腔に血栓ができやすくなり,それらが脳梗塞などの動脈塞栓症の原因となります.

 多くの心不全は急性心不全として発症し,治療などによりいったん改善するも,心筋障害は残存します.生体はさまざまな神経体液性因子(代償機転として機能をもつ体内のホルモン系や自律神経系)を活性化することで心筋ポンプ機能を維持し,短期的には有効ですが,「やせ馬に鞭を打つ」状態となります.このことが心不全の進行を促し,長期的にはよくない結果(重症心不全)をもたらします.心不全における悪循環を断ち切るために,さまざまな薬物(心臓を休める内服薬)を服用します.適切な治療を受けた慢性心不全は,安定している状態では,自覚症状は改善していますが,さまざまな誘因(感染症,塩分摂取過多,内服中断,過労,新たな不整脈,虚血など)による急性増悪と回復を繰り返していくなかで,状況に応じた適切な治療を行っていないと心機能は徐々に悪化していくことになります2)

2.治療目的

 慢性心不全

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